小豆島出身の作家壺井栄(1899~1967年)の直筆原稿などを紹介する企画展「壺井栄の生きた時代と小豆島~山口大二氏寄贈資料展~」が、香川県小豆郡小豆島町安田の町立図書館で開かれている。平和や家族の大切さに思いを巡らせ、何度も推敲(すいこう)した跡が残る小説「母のない子と子のない母と」などの直筆の原稿用紙が、来館者の視線を引き付けている。10月2日まで。


壺井栄の直筆原稿などに見入る親子連れ=小豆島町安田、町立図書館


 企画展は、栄と親交があった同町出身の山口大二さん(故人)が収集していた直筆原稿など約540点を昨秋に遺族が町に寄贈したことと、児童生徒を対象にした作文コンクール「壺井栄賞」(壺井栄顕彰会主催)が今年で50回目を迎えたことを記念して開催。寄贈された資料を中心に約20点を並べている。
 注目度が高いのは、映画化、ドラマ化された「母のない子と子のない母と」の直筆原稿。終戦直後の小豆島を舞台に、母を失った子どもたちと、戦争で家族を亡くし、島に戻ってきた女性との交流を描いている。会話の場面などでは、枠外に言葉を少し変えるなどした別パターンを用意したり、加筆や削除など編集者に対する細かな指示などが記されたりしている。また、映画の一場面の写真や、栄の夫の繁治が書いた「主題歌」なども添えられている。
 「右文(みぎふみ)覚え書」は1951年に刊行され、62年にはドラマ化された小説。壺井夫婦が戦争と病気で両親を失った生後1カ月の孤児「右文」を引き取って育てた実話に基づいており、原稿用紙は山口さんによって冊子に装丁され、外装の箱は夫婦が好んだ紺色に仕上げられている。
 入館無料。開館時間は午前10時から午後6時まで。問い合わせは町生涯学習課、電話0879-82-7015。

(四国新聞・2022/09/27掲載)



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