香川県善通寺市大麻町の灸まん美術館は、琴平町出身の画家でマルチな才能を発揮した和田邦坊(1899~1992年)を題材にした「いろはかるた」を制作した。専門学校穴吹デザインカレッジ(高松市錦町)に通う双子の姉妹が協力し、邦坊が創作した絵画や商品パッケージなどを絵札にデザイン。邦坊の多才ぶりを伝える48枚のかるたに仕上がり、姉妹は「美術館で多くの人に遊んでもらえたら」と話している。


「邦坊いろはカルタ」の解説パネルを手にする三木ちひろさん(右)とちさとさん=高松市錦町、専門学校穴吹デザインカレッジ


 かるたを制作したのは、昨年の二科展デザイン部の一部門で最高位の環境大臣賞を受賞した同校グラフィックデザイン学科2年の三木ちひろさん(20)=同市太田下町=と、上位から3番目の奨励賞を受賞した妹で2年のちさとさん(20)=同=。二人は高松工芸高時代、戦後の香川で商業デザイナーとして名をはせた邦坊の活躍を新聞で知ったことをきっかけに“邦坊ファン”になったという。
 昨年二人は邦坊作品を多く所蔵する灸まん美術館に関わりたいと、専門学校講師とインターンシップ先だったデザイン事務所「tao.」(同市)を通じてアピールしたところ、同館の西谷美紀学芸員が快諾。現在開催中の企画展に併せ、会場で遊びながら邦坊について学べるツールとしてかるたの制作を二人に依頼し、12月上旬に完成した。


灸まん美術館が制作した「邦坊いろはカルタ」


 かるたはポストカードサイズ。絵札には邦坊が手がけた作品のほかにも邦坊自身の古い写真などを取り入れ、人物像にも理解を深めることができる構成にした。絵札と対になる読み札は西谷学芸員の解説を基に創作したという。
 読み札のうち「にこにこと お金に火をつけ くつ照らす」は「成金男」で知られる風刺画「成金栄華時代」に描かれた紙幣を燃やすにこやかな男性を表現。また「なんしょんな 早く起きてよ 鍾馗(しょうき)さん」は、寝転がって動こうとしない疫病退治の神様「鍾馗」を起こそうとする鬼の様子を描いた作品からイメージをふくらませ、讃岐弁を交えてユニークに読み上げている。
 かるたは今年の11月中旬まで同館の特設スペースで展示予定。西谷学芸員は「将来は製品化を目指したい」と話している。

(四国新聞・2023/01/19掲載)



関連情報