高松市美術館(香川県高松市紺屋町)で現代アートに使われる「素材」に着目したコレクション展が開かれている。同館が2021年度収蔵した作品を中心に段ボールやCD、屋根瓦など多彩な「物」で表現した絵画やオブジェが並んでおり、作家のアイデアや手法の一端に触れることができる。3月26日まで。


現代アートに使われる「素材」に着目した作品が並ぶコレクション展=高松市紺屋町、市美術館

現代アートに使われる「素材」に着目した作品が並ぶコレクション展=高松市紺屋町、市美術館


 制作過程や用いられる素材に理解を深めることで現代アートをより楽しんでもらうことが狙い。本展では前衛芸術家の草間弥生や抽象画家白髪一雄(1924~2008年)をはじめ、気鋭の現代美術家ら15人が手がけた絵画や陶作品、ミクストメディアなど19点を展示している。
 このうち「大正生まれの三流画家」という設定になりきって創作活動を行うユアサエボシの「GHQ PORTRAITS」は、瓦150枚それぞれに笑顔の米兵の顔を水彩塗料で一人ずつ描いた作品で、本展では44枚を紹介。「ユアサエボシが戦後の画材がない中で、瓦に米兵の似顔絵を描いて生計を立てた」という設定が、見る人の想像をかきたてる。
 また、谷沢紗和子と芥川賞作家藤野可織による合作「無名」は、谷沢が粘土と貝殻を組み合わせて焼成した多数の陶人形から藤野がインスピレーションを受けて短編小説を執筆。陶人形に生命を宿らせたようなストーリーの小説は読むことができ、神秘的な世界観を生み出している。
 3月5日午前10時からは、視覚障害者と晴眼者がペアになって作品に触れたり、音を聞いたりして意見交換をしながら鑑賞する「みる誕生会」がある。両者の強みを生かすことで、より豊かな鑑賞を体験してもらう取り組みで同館はこのうち晴眼者4人を募集している。(先着順)
 同展の入場料は一般200円ほか。問い合わせ、申し込みは同館、電話087-823-1711。

(四国新聞・2023/02/23掲載)


高松市美術館



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