香川県高松市亀水町の瀬戸内海歴史民俗資料館の設立準備から草創期に携わった専門職員が、1970~80年代に瀬戸内海やその周辺で撮影した写真を紹介する企画展「高橋克夫民俗写真展―瀬戸内の景観・くらし・ひと―」が瀬戸内海歴史民俗資料館で開かれている。都市開発などにより現在は失われた風景を捉えたものもあり、人と自然の関わり方を見つめ直すことができる。19日まで。


1970~80年代の瀬戸内海の風景を捉えた写真などが並ぶ企画展=香川県高松市亀水町、瀬戸内海歴史民俗資料館

1970~80年代の瀬戸内海の風景を捉えた写真などが並ぶ企画展=香川県高松市亀水町、瀬戸内海歴史民俗資料館


 瀬戸内海歴史民俗資料館の専門職員だった高橋さん(1918~2000)は、小豆島町生まれ。香川県立学校の教諭を経て、1971年から同館の設立に携わり、80年まで専門職員として勤務、同館の所蔵品の収集などに尽力した。
 会場ではパネル写真34点のほか、高橋さんが愛用していたカメラや取材ノートなど約15点を展示。このうち、香川県東かがわ市西山の宮奥池で撮影した写真は、竹で作った柄の先のかぎにウナギを引っかける「ウナギかき」など昔ながらの漁法で魚を捕るところを捉えている。写真のそばには実際の漁具も並び、併せて見るとイメージが膨らみ、写真の躍動感が伝わる。
 広島市で撮影された「草津港とカキ船」は、都市開発によって姿を消した草津漁港を写しているほか、丸亀市広島町の小手島では瀬戸内海をバックに段々畑で作業する農家の姿を収めている。現在は耕作放棄地になっているという。
 このほか、魚の行商をする女性「いただきさん」や船大工など海に関わる仕事をする人々に焦点を当てたものもあり、当時の暮らしぶりがうかがえる。
 同館の専門職員の真鍋篤行さんは「後世に残していかなければいけないものがあるということを、視覚を通じて感じてもらえれば」と話している。

(四国新聞・2023/03/01掲載)


瀬戸内海歴史民俗資料館



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