香川県仲多度郡琴平町出身で画家や小説家などとマルチに活躍した和田邦坊(1899~1992年)の人生を写真と遺品で振り返るコレクション展が、香川県善通寺市大麻町の灸まん美術館で開かれている。邦坊が“コスプレ”をして取材に臨む様子や、農事講習所(現県立農業大学校)の教諭として指導する姿を納めた珍しい写真などが並び、明治から平成を駆け抜けた邦坊の新たな一面を伝えている。20日まで。


日活撮影所で時代劇衣装を着てポーズを決める和田邦坊

日活撮影所で時代劇衣装を着てポーズを決める和田邦坊


 コレクション展は「邦坊青春グラフティー」と題し、会期を3期(第2部は4月15日~7月2日、第3部は7月22日~11月13日)に分けて展示内容を入れ替える形式で開催。第1部の今展は邦坊の人となりにより理解を深めてもらおうと、邦坊の幼少期や戦前戦中の写真に加え、それらに関わりのある書籍、日用品など初公開を含む約120点を展示している。
 このうち、東京日日新聞(現毎日新聞)の記者などとして活躍していた昭和初期に焦点を当てたコーナーでは、邦坊が読者の依頼に応えて体当たり取材を行った新聞の連載企画「邦坊漫画探訪」を収録した書籍と併せ、時代劇に使われる衣装をまとった邦坊のユニークな写真を紹介。戦前を代表する映画俳優大河内伝次郎を取材する際、紙面化するためのイラストと記事の参考資料用に自身も化粧をして撮影したもので、邦坊のユーモアあふれる取材姿勢がうかがいしれる。


和田邦坊の人生を写真と遺品で振り返るコレクション展=香川県善通寺市大麻町、灸まん美術館

和田邦坊の人生を写真と遺品で振り返るコレクション展=香川県善通寺市大麻町、灸まん美術館


 また、被写体の片隅に偶然写り込んだ下駄や手提げかばん、道具入れなど邦坊が愛用した日用品を取り上げたコーナーもあるなど親近感を与える工夫も凝らしている。同館の西谷美紀学芸員は「写真のおかげで資料の価値が特定でき、邦坊の人柄にも理解が深まる。作品をより楽しむきっかけになれば」と話した。
 一般500円ほか。同館は3月18日まで高松市幸町の香川大博物館でも出前展示を行っている(入場無料)。問い合わせは灸まん美術館、電話0877-75-3000。

(四国新聞・2023/03/10掲載)


灸まん美術館



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