ロダンに学んだ日本人彫刻家として知られる藤川勇造(高松市出身、1883~1935年)の生誕140年を記念した展覧会が、香川県高松市玉藻町の県立ミュージアムで開かれている。初期から晩年までの代表作を中心に28点が並び、モデルの印象を大切にした藤川独自の表現に迫っている。4月16日まで。


藤川勇造の代表作が並ぶ展覧会。手前は「朝露」(1908年)=香川県高松市玉藻町、県立ミュージアム

藤川勇造の代表作が並ぶ展覧会。手前は「朝露」(1908年)=香川県高松市玉藻町、県立ミュージアム


 藤川は同市の漆工の家に生まれ、讃岐漆芸の祖・玉楮象谷(たまかじぞうこく)は大伯父にあたる。県立工芸学校(現・高松工芸高)、東京美術学校(現・東京芸大)を経て渡仏。ロダンのもとで働きながら教えを受けた。帰国後は二科会に入り、彫刻部を開設するなど日本近代彫刻の発展に尽くした。
 展覧会では、同ミュージアムの収蔵品の中からブロンズ彫刻の代表作をはじめ、藤川の高い描写力がうかがえるデッサンや風景画なども紹介している。
 このうち帰国後の作品「ポーズせる女Ⅱ」(1926年)は、うずくまるような姿勢を取った女性の滑らかな肌の表現が印象的。初期の作品と比べると表面の起伏を抑えた穏やかな意匠となっており、この頃から丸みを帯びた作風へと変化していったという。
 モデルを入念に観察した上で制作したのも特徴。インドの青年をモチーフにした小品「海鳥を射る」(32年)は、躍動感のあるポーズで青年の息づかいが聞こえるようなリアルさがある。このほか、人物のしぐさを巧みに捉えた肖像や、ロダンに称賛されたという「兎(うさぎ)」(11年)も見どころ。
 担当学芸員は「モデルから得た印象を柔らかく作品に反映させようとした藤川の制作姿勢を感じ取ってほしい」と話している。
 入場料は一般410円ほか。4月9日午後1時30分から担当学芸員による展示解説。問い合わせは同ミュージアム、電話087-822-0247。

(四国新聞・2023/03/22掲載)


香川県立ミュージアム



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