香川県坂出市沙弥島の東山魁夷せとうち美術館で、叙情感あふれる風景画と併せ、魁夷と交流のあった人々からの“作品解説”ともいえる文章をパネルで紹介する第4期テーマ作品展が開かれている。魁夷が留学や旅を通して追い求めた自然美の表現を画家や作家、哲学者らの言葉を手がかりに探ることができる。4月9日まで。


「晩鐘」(中央)などの作品に見入る来館者=香川県坂出市沙弥島、東山魁夷せとうち美術館

「晩鐘」(中央)などの作品に見入る来館者=香川県坂出市沙弥島、東山魁夷せとうち美術館


 今展では魁夷が1947~82年に制作した国内外の自然や街並みを捉えた風景画29点を展示。1階では、魁夷と共に「日展三山」の一人に数えられる高山辰雄や、奥田元宋といった日本画壇の新時代を切り開いた画家らに焦点を当て、彼らが魁夷の作品から感じた印象などを記した文章を添えている。
 このうち、「夕静寂」(74年)は長野と岐阜県境の安房峠周辺や奥穂高の景観をモチーフにした作品。青一色の濃淡で静寂に包まれた渓谷を描いており、魁夷の義弟で日本画家の川崎鈴彦(97)は「色彩を抑制することで、精神的に深い世界を表現しようと試みている」と記している。
 2階では魁夷と同時代に活躍した評論家、哲学者らが魁夷について語った言葉を厳選。魁夷が夕暮れのドイツ・フライブルクに映える大聖堂を表現したリトグラフ「晩鐘」(71年)には家族ぐるみで親交が深かった作家川端康成の感想を添え、同作品の下絵を借りて連日眺めていた川端は「暮色の町並みの細心微妙に描かれた美しさが次第と心にしみて来た」とつづり、作家ならではの温かみのある洞察力がうかがえる。
 入館料は一般310円ほか。問い合わせは東山魁夷せとうち美術館、電話0877-44-1333。

(四国新聞・2023/03/24掲載)


東山魁夷せとうち美術館



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