行き場のない気持ちや誰かに伝えたい思いを預かってくれると、世界から注目を集める「漂流郵便局」の分局が24日、香川県綾歌郡綾川町萱原のイオンモール綾川で本格開業する。常設の分局ができるのは初めてで、同店は「残された人たちの思いを受け止める受け皿になりたい」としている。


行き場のない気持ちの受け皿として本格開業する「漂流郵便局」の分局=香川県綾川町萱原、イオンモール綾川

行き場のない気持ちの受け皿として本格開業する「漂流郵便局」の分局=香川県綾川町萱原、イオンモール綾川


 漂流郵便局は、現代美術作家の久保田沙耶さんが2013年、瀬戸内国際芸術祭のアートプロジェクトとして、香川県三豊市詫間町の粟島にある旧粟島郵便局舎を活用して誕生。大きな反響を呼び、瀬戸芸終了後も中田勝久局長がコンセプトを引き継いで翌14年から月2回、定期的に開局している。
 今回、同店の営業担当社員・藤本幹子さんが、昨年放送されたドラマで同局が取り上げられたのを見てコンセプトに共感し、店内での開局を企画した。久保田さんに打診したところ「同じ意思を持って運営してくれる分局の誕生はうれしい」と快諾を得て、今年1月末からオープンに向けた準備を進めてきた。
 分局は2階にあり、敷地中央に手紙やはがきを投函(とうかん)する赤いポスト(高さ約1メートル)を設置した。局内にスタッフは置かず、三つのテーブルを設けて自由に手紙などがしたためられるようにしたほか、これまでに届いた文章の展示スペースもある。投函された手紙などは同店で取りまとめ、粟島の“本局”へ送付する。開業時間は午前10時~午後9時で無休。
 藤本さん自身も身近な家族を失った経験があると言い、「思いを漂流郵便局に投函することで、利用した人の心の重荷が少しでも軽減されることを願っている」と話した。中田局長は「落としどころのない思いを持つ人は多い。受け入れ窓口が増えることを歓迎したい」とエールを送った。

(四国新聞・2023/03/24掲載)



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