香川県仲多度郡琴平町出身の画家でマルチな才能を発揮した和田邦坊(1899~1992年)が、昭和40年代にデザインした張り子人形「おとぼけ人形」を高松市の企業が復刻した。当時、香川を代表する土産品にしようと企画されたが、量産がかなわず一般販売は頓挫。今春、幻ともいえる作品が県の伝統工芸士2人の手作業でよみがえり、愛きょうのある人形の表情が話題を呼びそうだ。


香川県の伝統工芸士らが復刻した4種類の「おとぼけ人形」

香川県の伝統工芸士らが復刻した4種類の「おとぼけ人形」


 復刻したのはデザイン会社「tao.」。同社によると、当初のおとぼけ人形は個性的な風合いを出すため頭部は土器川の石を用いて成形。石を樹脂でかたどり、型に和紙を直接張り重ねる「張りぼて」の手法で作られた。
 邦坊がキャラクターデザインなどを担い、「おやじと役者」と題したシリーズで全10種類が制作された。役者がセリフを忘れてきょとんとした顔や、じっくりと考え事をしているかのような“とぼけた”表情に癒やされた人が多かったという。
 邦坊と人形を開発した一閑張りの県伝統工芸士・宇野雄三さんから2010年に経緯を聞いた同社が、香川の伝統的工芸品の技術を次世代に伝え、玩具としての魅力の再発見につなげようと灸まん美術館(善通寺市)の監修、協力を得て昨年から創作に着手した。
 いずれも県伝統工芸士の欄間彫刻を手がける朝倉準一さん(高松市)と「張子虎」を制作する田井艶子さん(三豊市)に依頼し、土台となる木型を朝倉さんが担当。田井さんが張り子で成形、絵付けをして完成させた。設計図がないため、原型の人形を手本に手作業で作り上げている。
 人形は「セリフを忘れた役者」「おどるおやじ」「かんがえるおやじ」「かみなりおやじ」の全4種類。小さなスペースでも並べて鑑賞しやすいよう、原寸より一回り縮小して高さは最大約18センチに仕上げた。鮮やかな赤や青色を塗りつけ、大胆な筆遣いを感じられる作品となっている。
 1点7700円(税込み)。21日から讃岐おもちゃ美術館shop(高松市)などで販売する。問い合わせは同館、電話087-887-6762。

(四国新聞・2023/04/21掲載)


tao.


讃岐おもちゃ美術館



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