祖父と孫の書、読み解く 藤沢南岳と桓夫 高松市塩江美術館・28日まで
香川県東かがわ市出身の漢学者・藤沢南岳(1842~1920年)と孫で小説家の藤沢桓夫(たけお)(1904~88年)の書が並ぶ企画展「GrandpaとGrandson-南岳と桓夫-」が、香川県高松市塩江町の市塩江美術館で開かれている。個性が際立つ筆運びから、それぞれの哲学観が浮かび上がる内容となっている。28日まで。
南岳は、高松藩の方針を佐幕から勤王へと転換させ、藩の危機を救った功労者として知られ、大阪の「通天閣」や小豆島の「寒霞渓」などの命名者でもある。桓夫は大阪生まれで、同人誌で発表した作品をきっかけに文壇に進出した。著作には映画化された長編小説「新雪」などがある。二人は、桓夫の少年時代を大阪で一緒に過ごし、桓夫は南岳から漢学や書について教わったという。
企画展では、「間(ま)」と「払い」を鑑賞のポイントとしつつ、計21点を展示。南岳が75歳のときに記した書は、晩年になってからの修養の大切さを書いており、流れるような筆運びや、筆の毛の一本一本まで気を配った繊細な払いが目を引く。桓夫は自作の俳句などをしたためており、素朴な字体やゆったりとした間、独特な払いに桓夫らしさが感じられる。
担当学芸員の高嶋良子さんは「二人の関係性や、書くことを通して自分と対話する大切さが伝われば」と話している。
入場料は一般300円ほか。問い合わせは高松市塩江美術館、電話087-893-1800。
(四国新聞・2023/05/11掲載)