香川大教育学部の学生が、高松市中心部の喫茶店などに自分たちが手がけたアートを展示する取り組みを展開している。県民らに絵画や造形作品を鑑賞しながら街中を巡ってもらう試みで、作品は学生が感じた店のイメージに合わせて制作。協力した店からは「雰囲気が良くなった」などとプラスの効果を指摘する声が上がっている。展示期間は店舗によって異なる。


香川大生の力作が展示された高松市内の店舗(コラージュ)

香川大生の力作が展示された高松市内の店舗(コラージュ)


 プロジェクトは、同学部美術領域の学生が「高松市街あるき美術館」として実施。アートの力で商店街を活性化させようと、4年の西内愛育(まい)さんと同大OBで中学校教諭の河西紀亮さん(27)が中心となって初めて企画した。着想は河西さんの学生時代のアルバイト先で現在は西内さんがバイトをしている飲食店が、新型コロナウイルスで深刻な影響を受けたのがきっかけ。「コロナの影響でお客さんが来ない」という店長の一言から、「自分たちの作品を展示することで恩返しできないか」とアイデアが浮かんだという。
 2人の考えに賛同した学生とOB・OGの計17人が取り組みに参加。展示場所は高松中央商店街を中心に各自が思い入れのある飲食店や菓子店など14カ所を選定した。「ただ作品を飾るだけではなく、学生と店が密に関わることで、その場所ならではのアートを生み出せたら」と西内さん。学生が店側の希望やコンセプトを聞き取り、数カ月かけて絵画や立体造形、工芸品など37点を仕上げた。
 片原町商店街にある「喫茶室了見」では、店名をあしらった温かみのある油彩画の看板が来店者を出迎える。レトロな木製家具が並ぶ店内には植物や人物などを描いた絵画4点が配置され、どの作品もインテリアの色合いと調和している。
 看板を手がけたのは同店でアルバイトをしている4年の矢野颯大さん。「店の温かい雰囲気に合わせて作った。アートと一緒に飲食を楽しんでほしい」と話す。鑑賞した常連客の鳥塚やよいさん(64)は「かわいい絵や不思議な絵もあって、喫茶店がまるでギャラリーのようになった」と声を弾ませる。
 「普段はあまり見ない若い層がアートを目的に訪れてくれている」とは、ふくや呉服店(同市丸亀町)。扇やチョウをモチーフにした力作が並び「店や商品のイメージに合った作品ばかりで、若い人が伝統的な和装に興味を持つきっかけになれば」と期待を寄せる。牛の絵を展示したステーキハウスやま(同市亀井町)の店員は「絵を飾るだけで店の雰囲気が良くなる。お客さんからも好評」と話していた。
 「学生にとっても地域のために行動するのは貴重な経験」と西内さん。プロジェクトは来年以降も後輩が引き継ぐ予定で「今回は情報発信が不足していたので、次は商店街と協力してPRしたい。香川大生以外の作家の出展も受け入れるなど規模を広げていけたら」と意欲を示した。

(四国新聞・2023/06/09掲載)


高松市街あるき美術館 ~香川大学教育学部美術領域作品展~


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