写真を基に“超写実”追求 高松市美術館で特別展
高松市美術館(香川県高松市紺屋町)で、開館35周年記念特別展「上田薫展」が開かれている。代表作とも言える生卵やゼリーを写実的に描いた絵画に加え、初期の未公開作品なども展示しており、リアルを極限まで追求した「スーパーリアリズム絵画」に至るまでの変遷が一望できる。9月18日まで。
東京都出身の上田(1928年~)は、東京芸大卒業後、抽象画家としてのキャリアをスタート。グラフィックデザイナーとしても活躍し、1970年代に写真を基に描く独自の写実技法を確立させた。今回の特別展では、作風を模索していた頃の抽象画から超写実的な油彩画、90歳を超えた近年に描いたスケッチまで約120点を紹介している。
卵が割れる瞬間を絵画に閉じ込めた「なま玉子J」は、その流動性や潤いを忠実に捉えており、白身の部分にカメラを手にする上田らしき姿まで見える。離れて鑑賞すると写真と見まがうが、近づくと筆の運びが分かり、だまし絵を見たような不思議な感覚に陥る。
川の流れを題材にした90年代の「流れ」シリーズや、海や空などを捉えた2000年代の「Sky」シリーズも並んでいる。また、色鉛筆を使って動物をキャラクターのようなテイストで描いた近年の作品もあり、創作意欲が衰えていないことを感じさせる。
担当学芸員の石田智子さんは「一人の画家の人生が見て取れる展示なので、ぜひ楽しんでほしい」としている。
入場料は一般1200円ほか。問い合わせは同館、電話087-823-1711。
(四国新聞・2023/08/11掲載)