香川県高松市塩江町ゆかりの儒学者で、幕末から大正にかけて活躍した藤沢南岳(1842~1920年)の書を集めた特別展が9月23、24の両日、同市上林町の大西・アオイ記念館で開かれる。同町の茶室「花待草舎(はなまちそうしゃ)」の収蔵品から約30点を展示。同舎主宰の茶道師範・美沢宗包さん(94)は「世界で戦争の話題が尽きない昨今、幕末に命を懸けて高松藩が戦争に向かうのを阻止した南岳の心に触れてほしい」と話している。


南岳が絵に描いた石を賛美する漢詩を自ら詠み、書いた「画石歌」


 南岳は、関西大学のルーツとされる漢学塾「泊園(はくえん)書院」を開いた同町出身の儒学者、藤沢東畡(とうがい)の長男。鳥羽伏見の戦いで、幕府方として戦列に加わったことで朝敵とされた高松藩を勤皇の方針へ転換させ、危機から救った功績をはじめ、小豆島の「寒霞渓」、大阪の「通天閣」を命名したことでも知られている。
 美沢さんは50年ほど前から東畡・南岳親子に興味を持ち、長年書などを収集。収蔵品は南岳の作品だけで150点、関係者も含めると200点を超える。
 特別展では、南岳が門下の大社南洋(おおこそなんよう)(大社義規・日本ハム創業者の祖父)のために書いた漢詩の大掛け軸「画石歌」のほか、「教育勅語」など一般公開したことのない約30点を選んで展示する。
 同舎の収蔵品を研究している太田剛四国大学教授は「南岳は学者としても書人としても秀逸で、自作の漢詩を独自の世界観で表現している。今後、収蔵品の内容を詳細に読み解けば南岳の交流関係や出来事など新事実が出てくるだろう」と話している。
 23日午後1時からは、全国漢文教育学会の田山泰三評議員が、南岳の孫の小説家・藤沢桓夫(1904~89年)について「藤沢桓夫の生涯と文学」、太田教授が「花待草舎蔵の書作品に込められたメッセージを読み解く」として講演する。24日は美沢さんによる茶席も設ける。問い合わせは大西・アオイ記念館、電話087-880-7888。

(四国新聞・2023/08/31掲載)



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