チベット僧が色とりどりの砂を使って30年前に制作した「砂曼荼羅(すなまんだら)」が、山形市の公民館から縁あって香川県小豆郡小豆島町の小豆島霊場40番札所・保安寺(宮内義澄住職)に寄贈された。宇宙を表した極彩色の仏教美術が放つ存在感は強烈で、同寺では11月をめどに本堂を増築して一般公開する予定。搬入に尽力した同寺の宮内亜門副住職(53)は「国内では数少ない貴重な仏教美術作品。多くの人にその素晴らしさを感じてもらいたい」と準備に力が入っている。


チベット僧が制作し、山形で保管、展示されていた砂曼荼羅に見入る宮内義澄住職(左)と亜門副住職=小豆島町蒲生、保安寺


 寄贈された砂曼荼羅は、山形市で1993年10月に開かれた「日本文化デザイン会議」(日本文化デザインフォーラム主催)の際、チベット僧6人が約1週間かけて公開制作したもの。大きさは1・9メートル四方で、ケースも含めた総重量は約200キロ。青、白、赤、黄、緑など12色に彩色した大理石の粉を使い、中央に本尊を、その周囲に雲や蓮の花、トラなどを精緻に描き、円形になるよう配置している。
 チベット仏教では、儀式などで使われた後は無常の象徴として崩され、水に流すのが一般的だ。この砂曼荼羅は、同市の七日町商店街振興組合などの要望で硬化処理され同組合が所有。同市の中央公民館で30年にわたって展示されてきた。
 公民館が9月からリニューアル工事に入ることに合わせ、新たな保管・展示場所を組合が探していたところ、知人を通じて紹介を受けた宮内副住職が手を挙げた。運搬や今後の展示方法などについて詳細に説明し、受け入れ先に選ばれたという。
 砂曼荼羅の制作時にボランティアとして携わった同組合常任理事の結城康三さん(67)は「意外なほど遠い場所に移すことになったが、チベット僧らの思いもくみ取ってもらえる寺院でほっとしている」と話していた。
 宮内副住職は「新型コロナウイルス感染症の5類移行のタイミングで、これも何かのご縁。国内外から誰が見学に訪れても恥ずかしくない展示を心がける」と話していた。

(四国新聞・2023/09/08掲載)



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