香川大学博物館(香川県高松市幸町)学内外つなぐ「知の拠点」 地域密着型の交流創出
四国初の大学博物館として、香川大幸町北キャンパス(香川県高松市)に開館して今年で15年目を迎えた「香川大学博物館」。全学部の学術資料や研究成果を活用した展示のほか、学内外でのミュージアムレクチャーなどを毎年行っている。「博物館は大学の窓」―。そう語る同大創造工学部教授の寺林優館長の案内で現在開かれている企画展を見学した。
同館は、教育と研究の成果を公開することを目的にさまざまな分野の教員が集結して2007年に設置。延べ床面積は展示室、収蔵庫、実習スペースを合わせて約250平方メートルで、展示室は一般的な教室ほどの広さだが収蔵資料は数万点にも及ぶ。
例えば、栗林公園動物園(04年閉鎖)で飼育されていた動物の剥製標本や超小型人工衛星の模型(創造工学部)、希少糖を抽出する機械(農学部)など学部の垣根を越えた資料、発明品を保管。県内には少ない自然史系博物館の役割も果たしている。
大学内にある博物館と聞くと、敷居が高いイメージがあるが、同館では、これらの資料を生かした常設展や学内外の個人、団体と協力した多様な企画展と特別展を基本的には入場無料で開催。毎回、テーマに合わせた関連行事も実施している。
開催中の企画展では、日本初の縦型乾式メタン発酵施設でのワークショップやスマホ顕微鏡を使った体験教室などを行い、子どもを中心に幅広い世代が参加。講師に同大教授はもちろん、地元企業や研究者らを迎えることで地域に密着した交流の場を創出している。
寺林館長が博物館を「大学の窓」と考えるのは、「学内の研究成果や取り組みを知るのに最適な場所だから」。子どもたちが進路を考えるきっかけになったり、郷土の自然や文化を学んで興味関心を育む機会になったりと、大学と外をつなぐ「知の拠点」となっているようだ。
今展では、香川大の前身・県尋常師範学校を経て日本女性初の理学博士となった保井コノ(1880~1971年、東かがわ市三本松出身)の研究内容などを取り上げている。興味を引かれたのは石炭を薄く切断したプレパラート群。保井博士は近代までエネルギーの主力だった石炭の研究として、構成物質である植物の種類や性質を調べていたそうだ。
このほか、植物学者牧野富太郎が中心となって創刊した「植物学雑誌」に保井博士が発表した論文の一部や、私物の顕微鏡などがずらり。寺林館長は「大半の女性が大学に行けなかった時代に、博士号を取得した保井氏の研究に打ち込んだ生涯を知ってほしい」と話していた。
(四国新聞・2023/09/23掲載)