総本山善通寺で200年ぶり 巨大曼荼羅、来月公開へ 真言密教の世界観描く
香川県善通寺市の総本山善通寺(菅智潤法主)は23日、真言密教の世界観を絵画化した2軸の曼荼羅(まんだら)「両界(りょうがい)大曼荼羅」を、11月の一般公開を前に報道関係者に披露した。一般公開は弘法大師空海の誕生1250年記念行事の一環で、同寺で実施するのは1823年以来200年ぶり。いずれも約4メートル四方、掛け軸の装丁部分を含めると約5メートル四方の巨大な曼荼羅で、仏や菩薩(ぼさつ)などが金銀の線で精緻に描かれている。菅法主は「真言密教の神髄が詰まっている図。次はいつ公開するか分からないので、ぜひ間近で見てほしい」と呼びかけている。
同寺の両界大曼荼羅は「胎蔵(たいぞう)界曼荼羅」と「金剛界曼荼羅」から成り、それぞれ江戸後期に原在中(はらざいちゅう)と長谷川賀一(かいち)の2人の画家が描いた。中国から戻った空海が監修したとされる現存最古の両界曼荼羅「高雄曼荼羅」(9世紀、国宝)をほぼ同サイズで転写したもので、仏や菩薩の細部は、高雄曼荼羅の図像を墨書きでまとめた巻物「紙本白描高雄曼荼羅図像」(12世紀、国重要文化財)を参考にしたとみられる。
慈悲の心を表現した胎蔵界では、悟りの境地にいる大日如来を中心に、阿弥陀(あみだ)如来や不動明王など409体を描写。知恵の世界を表現した金剛界は、九つの区画に大日如来をはじめとした1461体が収められている。ともに紫色の絹地に、金泥と銀泥の流麗な線だけで描かれており、空海が考案した手法とされる。
両界大曼荼羅は11月7日から12日まで、同寺金堂(本堂)の本尊・薬師如来像の両側に設置する。拝観無料だが、文化財保護のため、天候の影響で公開が中止されることもある。11日午後2時からは、両界大曼荼羅に詳しい松岡明子・瀬戸内海歴史民俗資料館長の講演会を開く(無料)。
直近では同寺創建1200年の2006年、当時の県歴史博物館で展示されたが、菅法主は「単なる美術品としての展示ではなく、本堂に掛けられることに意味がある。仏様が作り出す空間を感じてもらえたら」と話している。
(四国新聞・2023/10/24掲載)