黒板アートでまちおこしを進めている香川県善通寺市で3日、新アートイベント「黒板街」が開幕した。工場跡やスナック跡を会場に、人気黒板アート作家・すずきらなさんの絵とプロジェクションマッピングを組み合わせた作品や、地元高校生と共同制作した巨大作品などを展示。レトロな街並みに溶け込むような懐かしさや、やがて消されるはかなさを感じさせる色鮮やかなチョーク画が、来場者を引きつけている。12月3日まで。


プロジェクションマッピングで動きだす黒板アート作品=善通寺市善通寺町、旧紅馬車


 市内に西日本有数の黒板メーカーがあることから、市は2019年から黒板アートによるまちおこしを開始。これまで黒板に描いたアクリル画なども黒板アートとしてきたが、原点回帰しチョーク画に限定した。今回、テレビCMやミュージックビデオにも作品が採用されているすずきさんに、協力を依頼した。
 この日は上吉田町のいわま黒板製作所旧上吉田工場で、黒板の緑色の塗料で染まった約100平方メートルの床をキャンバスに、すずきさんと善通寺一高校の生徒有志約30人とが共同制作。巨大なダイオウイカやリュウグウノツカイをはじめ、水面に顔をのぞかせるアザラシ、かわいらしいペンギン、イワシの群れなど海の生物を、13色のチョークを使って大胆に描いた。
 デザイン科1年の仁尾来風さん(16)は「こんな大きな作品は初めてで、みんなで描くのはめちゃめちゃ楽しい。すずきさんが描いてるのを見るだけでも、すごく刺激になった」と笑顔を見せた。


すずきさんと高校生たちが制作した黒板アート作品=善通寺市上吉田町、いわま黒板製作所旧上吉田工場


 善通寺町の旧スナック紅馬車では、すずきさんが描いた約2・5メートル四方の「ゆうゆうロード」を展示。陸上自衛隊善通寺駐屯地前のイチョウ並木と総本山善通寺の五重塔の景色の中、色づいた葉や歩道の自衛隊員がプロジェクションマッピングで光り、動き出す仕掛けとなっている。
 また夜には文京町のZENキューブで、すずきさんが制作実演。黒板で作った卓球台に作品を描き、実際に卓球に使ってもらうようにした。今月中旬には市内の別のスナック跡に、坂出市在住の画家・山口一郎さんも作品を展示する予定。
 作品公開は12月3日までの金・土・日曜日と祝日限定だが、ZENキューブの卓球台は期間中毎日使用できる。
 すずきさんは「黒板アートは最後に消えるはかなさが魅力。今しか見られないアートを楽しんでほしい」と話している。

(四国新聞・2023/11/04掲載)


黒板アートイベント『黒板街』


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