瀬戸内をテーマに、香川県と東京芸術大が連携して行う美術展「海は人を愛する『くらし⇄うみ』展」が、瀬戸内海歴史民俗資料館(高松市亀水町)で開かれている。県内外のアーティストが県内の中高生と一緒に離島などの暮らしを調査した上で現代アートを制作。地域の民俗資料が並ぶ会場に溶け込むように展示され、瀬戸内の暮らしを芸術として浮かび上がらせている。26日まで。


島々を撮影した写真作品について解説する宮脇さん(右端)=香川県高松市亀水町、瀬戸内海歴史民俗資料館

島々を撮影した写真作品について解説する宮脇さん(右端)=香川県高松市亀水町、瀬戸内海歴史民俗資料館


 地域の文化芸術を担う人材育成などを目的とした県と東京芸大の連携事業の一環。昨年度からは県民がアーティストの作品制作や展覧会の開催準備に携わる「瀬戸内海分校プロジェクト」として展開しており、今年は同資料館の開館50周年に合わせて実施した。
 今回は伊東五津美さん、坂田ゆかりさん、鉾井喬さんの東京芸大出身アーティストに加え、高松市の写真家宮脇慎太郎さんが参加。8月に県内の中高生26人と塩飽諸島や坂出市の金山などで現地調査を行った上で作品を制作した。
 このうち、鉾井さんの「風景の先を捉える」は、海上と海中を撮影した約30枚の写真を館内の一角に浮かぶように配置したインスタレーション。写真は8分程度かけて撮影することで潮の流れや光が写り込んでいる。生徒と一緒に行った漁師へのインタビューから着想を得たといい、鉾井さんは「風景の微細な変化を感じ取る漁師の感性に触れてほしい」と話す。
 宮脇さんは島の人口と同じ数だけ撮影した花や人物などの写真でコラージュを制作。ほかにもワークショップで制作した土器や、生徒が塩作りを体験する映像など、地域の歴史や暮らしに根付いた作品が並んだ。
 総合監修を務めた日比野克彦東京芸大学長は「人々の暮らしとアートは密接につながっていることを知ってほしい」と話している。

(四国新聞・2023/11/06掲載)


瀬戸内海歴史民俗資料館



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