工芸界で国内最大規模の公募展「第70回日本伝統工芸展」が、1月2日から香川県高松市玉藻町の香川県立ミュージアムで開かれる。今展では漆芸で善通寺市出身の松本達弥さん(62)=千葉県在住=が最高賞に当たる日本工芸会総裁賞を受賞。会場には松本さんの作品をはじめ、入賞・入選作など計220点が並び、全国の作家が磨き抜いた「技と美」が新春に競演する。21日まで。


松本達弥さんの 「彫漆箱 『遥かに』」


 同展では陶芸、染織、漆芸、金工、木竹工、人形、諸工芸の7部門に全国の1100人から1177点の応募があり、入賞19点を含む552点が入選。展覧会は全国10カ所を巡回する。
 8カ所目となる高松展では、重要無形文化財保持者(人間国宝)の40点や入賞作をはじめ、香川など四国在住作家の入選作計220点を展示。漆芸部門は北岡道代さんの日本工芸会新人賞受賞作「乾漆蒟醤(きんま)箱『瑠璃藤花(とうか)』」など全入選作79点が観覧できる。
 松本さんの「彫漆(ちょうしつ)箱『遥(はる)かに』」は故郷の瀬戸内の穏やかな海をイメージ。50回塗り重ねた漆を彫って青と白色のグラデーションを表出させ、貝や真珠を加えて波のきらめきを表現した。箱の内側には2羽のカモメを彫っている。松本さんは文化財の修復にも従事しており「漆芸と修復の両方で海外へ羽ばたき、新たな世界を開拓したい」との思いを込めたという。


山下義人さんの 「ひかり蒟醤合子」


 地元の人間国宝は山下義人さん(高松市)と大谷早人さん(同)が出品。山下さんの「ひかり蒟醤合子(ごうす)」は虹から着想を得た作品で、大谷さんの「籃胎(らんたい)蒟醤水指『叢中(そうちゅう)』」は市松模様のような柄とチョウの影をあしらっている。


大谷早人さんの 「籃胎蒟醤水指 『叢中』」


 入場料は一般650円(前売り520円)ほか。14日は午後1時半から講堂で松本さんの講演会「彫漆と文化財修復」がある(要申し込み)。問い合わせは香川県立ミュージアム、電話087-822-0247。
 会期中は入選作家が展示解説を行う。日程は次の通りで、各日午後1時半から。(敬称略)
 6日 伊藤信夫(陶芸)▽7日 松原弘明(漆芸)▽8日 北岡省三(同)▽13日 近藤裕美子(諸工芸)▽21日 佐々木正博(漆芸)

(四国新聞・2023/12/28掲載)



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