讃岐三白の一つである綿を紡いだ木綿糸でもみ殻を和紙で包んだ丸い土台の表面を何重にも巻き、その後、華やかな色彩の木綿糸を一針一針丁寧にかがって作る讃岐かがり手まり。昔ながらの素材と技法を受け継ぐ県の伝統工芸品で、万華鏡のような幾何学模様の美しさが見る人を魅了している。制作の体験教室があると聞き、香川県高松市観光町の讃岐かがり手まり保存会へと足を運んだ。


「土台まり」に何度も糸をかがって模様を作り出していく=高松市観光町、讃岐かがり手まり保存会

「土台まり」に何度も糸をかがって模様を作り出していく=高松市観光町、讃岐かがり手まり保存会


 「かがる」とは、土台に糸をくぐらせて、決めた場所まで巡らせること。讃岐かがり手まりは、全体のデザインをイメージしながら草木染した木綿糸を場所を変えて何度もかがる。江戸時代には西讃で盛んに作られていたという。明治時代になるとゴム手まりの普及により衰退したが、同保存会の設立者である故荒木計雄(かずお)さんが技術継承と保存に尽力し、1987年に県の伝統工芸品に指定された。
 設立から41年目を迎えた同保存会は、現在も当時の技法を守り、藍や紅花といった天然の素材を用いて草木染した糸を使用。100色以上をそろえ、多彩な風合いの作品を生み出している。小さな手まりを球状になるようつなぎ合わせ、中に香り袋をしのばせた「掛け香」といった実用的なタイプもある。
 部屋を彩るインテリアのほか、西讃の婚礼で欠かせない菓子の「おいり」に似た見た目から引き出物としても引き合いがあり、県内外で人気を集めている。東京・日本橋の老舗和紙店などに加え、昨年12月からは羽田空港の第3ターミナル内のショップでの取り扱いも始まった。


幾何学模様の美しさが際立つ「讃岐かがり手まり」

幾何学模様の美しさが際立つ「讃岐かがり手まり」


 体験教室の参加者の年代は幅広く、「香川の文化を知りたい」と香港など外国人観光客が訪れることもあるという。難易度や対象年齢などによって3種類あり、このうち所要時間が2時間から2時間半の「じっくり体験」では、「八重菊」「コスモス」など4種類の模様から選択。模様によっては草木染の糸から好きな色を選んで作ることができる。
 円周約20センチの「土台まり」に、何度も糸をかがって模様を作り出していく。糸が重なり少しずつ模様が浮かんでくるのが楽しい。同保存会のメンバーがこつを教えてくれるので、手先の器用さに自信がない人でも大丈夫。作業は単純で規則正しい動きであることから、「無心になれる。まるで禅のよう」と感想を口にする人もいるそうだ。
 同保存会のメンバーは「眺めてめでたり、手の中で転がしてみたり。手まりは心を満たしてくれる存在」とその魅力を語る。体験教室が、新たな趣味の始まりになるかもしれない。
 じっくり体験は5500円。3営業日前までに予約する。

(四国新聞・2024/01/27掲載)


讃岐かがり手まり



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