香川県丸亀市浜町の市猪熊弦一郎現代美術館で、現代アート作家6人に猪熊作品を加えた企画展「回復する」が開かれている。新型コロナウイルスの世界的大流行をはじめ、争いや災害などに次々と直面する中で、現在を見つめ直したり、生きる喜びを感じたりして制作した計94作品を紹介。絵画や写真、映像などさまざまなアプローチで、それぞれの「回復」を表現している。3月10日まで。


「回復する」をテーマに集められた7人の作品が並ぶ企画展=香川県丸亀市浜町、市猪熊弦一郎現代美術館

「回復する」をテーマに集められた7人の作品が並ぶ企画展=香川県丸亀市浜町、市猪熊弦一郎現代美術館


 出展しているのは、ブラジル出身の大岩オスカールさん、レバノン出身のモナ・ハトゥムさん、兵庫県出身の米田知子さん、東京都出身の小金沢健人さん、岩手県出身の畠山直哉さん、青森県出身の兼子裕代さんの6人。
 「私たちはどのように自己を回復し、進んでいくことができるか」というテーマの中で、例えば、大岩さんは米国同時多発テロ事件翌年の2002年にニューヨークで見た虹から明るい未来を感じ取って表現。レバノン内戦で英国から帰国できなくなったモナさんはガラス玉を敷き詰めて世界地図をかたどり、容易に崩れてしまいそうな緊張感や国境のない世界を想起させる作品に仕上げた。
 兼子さんは社会復帰を目指す元受刑者を受け入れている米国の植物栽培園で自身も働きながら、元受刑者らの姿を撮影。ドローイング(線画)と映像を組み合わせた作品を展開する小金沢さんは同美術館で事前に実施したワークショップで制作した新作を発表しており、「自分一人ではできない別のエネルギーをもらって作品をつくることができた」と振り返った。
 猪熊作品は妻を亡くした喪失感から脱した後、集中的に描き始めた「顔」シリーズを展示。同館の松村円学芸員は「回復と言っても必ずしも元通りにはならない。ただ、顔を上げて前を向いているのは全ての作品に共通しており、希望を宿した作品を楽しんでもらえれば」としている。
 時間は午前10時~午後6時。月曜休館。所定の観覧料が必要。問い合わせは〈0877-24-7755〉。

(四国新聞・2024/02/24掲載)


丸亀市猪熊弦一郎現代美術館



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