四国学院大演劇コースの卒業生でつくる舞台芸術ユニット「片隅企画」による公演が9、10の両日、香川県善通寺市文京町の市民会館で開かれる。安部公房の小説を原作に、独特の世界観を舞台に落とし込んだ挑戦的な作品で、出演者らは本番を前に稽古に励んでいる。


本番を前に稽古に励む出演者=善通寺市善通寺町、西部公民館


 同ユニットは、若手の俳優やスタッフが地方で演劇を続けるための土台づくりを目的に、大瀬戸正宗さん(24)=広島県出身=が2020年に立ち上げた。同市を拠点に6人で活動しており、県内外で公演を重ねている。
 今回の上演作「壁―その前に広がる曠野(こうや) その果てにある都市―」は安部公房の芥川賞受賞作「壁―S・カルマ氏の犯罪」が原作。台本は、小説から現代に通ずる要素を抽出して構成し、音楽や身体表現も交えながら社会の中で人々が感じている空虚感を表現する。台本・演出は大瀬戸さん、同ユニットのメンバーと同大の卒業生計5人が出演する。
 1日に行った稽古では、動きや声の大きさなどを意見を出し合いながら調整し、作品に磨きをかけた。出演する椙田航平さん(23)は「『分からないけど面白い』という感覚を観客の皆さんと共有できれば」、福島優菜さん(22)は「片隅企画のことを知ってもらうとともに、観劇の魅力も伝えたい」と話した。
 大瀬戸さんは「肩書など他者からの評価が重視される社会の中、『自分とは何か』と問いかける作品。本公演が来場者にとって新しいものに触れるきっかけとなれば」とアピールしている。
 公演は9日午後2時、10日午前11時開演。入場料は一般2500円ほか。問い合わせは同ユニット、メール〈k.katasumi@gmail.com〉。

(四国新聞・2024/03/08掲載)



関連情報