画家などとしてマルチな才能を発揮した和田邦坊(1899~1992年)=香川県仲多度郡琴平町出身=が描いた風刺画の中で、お札を燃やす成金男をフィギュアとして立体化させた商品が注目を集めている。2年前に神戸市のフィギュア制作会社が手がけたもので、今年2月に交流サイト(SNS)で突如話題となり1月の6倍以上の売れ行きを記録。監修した香川県善通寺市の灸まん美術館は「約100年前の風刺画が最新の技術で形となり、邦坊さんも喜んでいるはず」と話している。


「成金栄華時代」に登場する男性を再現した「成金おじさんフィギュア」=香川県善通寺市大麻町、灸まん美術館

「成金栄華時代」に登場する男性を再現した「成金おじさんフィギュア」=香川県善通寺市大麻町、灸まん美術館


 フィギュアの商品名は「成金おじさん」。第1次世界大戦で登場した成金を描いた風刺画「成金栄華時代」(1928年)が題材で、暗闇で靴を探す女性従業員のために100円札を燃やして「どうだ明るくなったろう」と話しかける男性を再現している。2年前、3Dフィギュアなどの企画・製造を行う「吉本アートファクトリー」(神戸市)が「教科書などで見たことのあるおじさんを立体化すれば面白いのでは」と邦坊作品の著作権を管理する同美術館に商品化を提案。最新鋭のフルカラー3Dプリンターを活用し、1個5千円で販売を始めた。
 体長5センチほどの紫外線硬化アクリル樹脂製フィギュアは、風刺画では描かれていない後ろ姿まで表現。ふくよかなおなかの出具合から鼻の赤らみ、白髪のグラデーションまで細かく作り込んでいる。
 同ファクトリー代表の吉本大輝さん(28)によると、これまでミュージアムショップと同社の通販を合わせて月約50個ほどの売れ行きだったが、2月6日のX(旧ツイッター)での投稿から人気に火が付き、注文が殺到。3月上旬時点で300個以上の注文が入った。現在は、風刺画で後ろ姿しか描かれていない女性従業員のフィギュアを試作中だという。
 同美術館の西谷美紀学芸員は「お金を燃やすなんてとんでもないことをしているのに、どこか憎めないのが魅力の一つ。今回を機に邦坊が手がけた多彩な作品を知ってもらえれば」と話している。

(四国新聞・2024/03/29掲載)


灸まん美術館



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