香川漆芸の技法を網羅した「絵本」の展示が香川県高松市上福岡町の讃岐漆芸美術館で開かれている。県漆芸研究所研究員のみなとふさこさん(27)=北海道出身=の初個展。スイーツをテーマにした心温まるストーリーとなっており、伝統の技と融合した若い感性に触れることができる。14日まで。


香川漆芸の技法で作り上げた絵本を紹介するみなとさん=香川県高松市上福岡町、讃岐漆芸美術館

香川漆芸の技法で作り上げた絵本を紹介するみなとさん=香川県高松市上福岡町、讃岐漆芸美術館


 個展は同館が同研究所修了作品の無料貸出事業を活用して実現。みなとさんは小学生時代に絵本作家になるのを夢見ていたといい、「紙のような平面ではなく、漆芸技術を用いた立体造形作品として触りながら読めば面白いと思った」と狙いを話す。
 作品は漆を12回塗り重ねた板(幅約12センチ、高さ13センチ)を21枚つなぎ合わせてびょうぶ型に配置。主に輪郭や模様に彫りを施して金を埋める「存清(ぞんせい)」を駆使しており、登場人物を柔らかなタッチで描いている。
 「りっちゃんとうさぎりんご/おねえちゃんのまほう」と題した物語は2部構成。表にある「りっちゃんとうさぎりんご」は、小さい女の子が姉のためにリンゴをウサギの形に切ったことから始まる。裏の「おねえちゃんのまほう」では、そのリンゴを使って姉がケーキを作る様子を描いており、互いを思い合う姉妹の姿にほっこりとさせられる。
 会場では読み聞かせ用の動画なども紹介。みなとさんお手製の絵本に登場するケーキ(150円)も数量限定で販売している。みなとさんは「読んで触って食べて、五感で楽しんでほしい」と来場を呼びかけている。

(四国新聞・2024/04/10掲載)


讃岐漆芸美術館



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