旅人集う現代の「茶堂」 琴平の老舗あめ店 江戸時代の交流の場 新たな形で開設
金刀比羅宮(香川県琴平町)の参道69段目に店舗を構えるあめ店「五人百姓 池商店」が、旅人が集えるスペース「茶堂(ちゃどう)」をオープンした。江戸時代、金刀比羅宮へとつながる「こんぴら五街道」にあった茶堂を、新たな形でよみがえらせた。同店28代目の池龍太郎さん(31)は「かつて茶堂は、旅人を地元民がもてなしながら、都会とこんぴらの情報を交換する場だった。ここも旅人の交流の場になれば」と期待している。
同店は、鎌倉時代の1245年に営業の記録が残る老舗中の老舗。五人百姓は、金刀比羅宮の神事の手伝いを代々の役割とし、境内での営業を許されている5軒の店を指す。茶堂は、与北の茶堂跡(善通寺市)など史跡として残っている例もあるが、大半は現存していない。
池さんは、同店のあめやスイーツを食べる場所が少なかったことも踏まえ、2022年夏ごろから茶堂を構想。店舗の奥を改装し、3月にオープンした。費用の一部には、観光庁の「地域一体となった観光地・観光産業の再生・高付加価値化事業」の補助金を充てた。
茶堂は広さ約18平方メートルで、あめの形である扇形の大きなガラス窓から、中庭を眺められる造り。来店者には、あめやスイーツを食べながら、会話や旅人ノートへの書き込みを楽しんでもらう。ノートには既に、旅の感想やうどん店情報などがつづられている。
茶堂の壁には、同町出身の画家・和田邦坊が同店に贈り、現在同店の紙袋のデザインとして使っている五人百姓の絵の原画を掛けた。一角には、屏風(びょうぶ)や火鉢を並べた撮影スポットをしつらえ。また、茶会などのイベントスペースとしても利用できるようにした。
このほか隣接する建物の一室を「琴平茶論(サロン)」と名付け、事前予約制で、旅行者らにエリアの歴史や魅力を伝える講座も開き、琴平ファンの拡大を図っている。池さんは「昔は一生に一度はこんぴら参りと言われていたが、何度でも訪れてもらえるようにしたい」と話している。
(四国新聞・2024/04/16掲載)