伝統美 親から子へ 北岡省三・みち代漆芸展 高松で21日まで
香川県高松市の漆芸家で県指定無形文化財保持者の北岡省三(74)と長女みち代(46)による親子展が、同市上福岡町の讃岐漆芸美術館で開かれている。親子で追求する伝統美を、それぞれの目線で表現した蒟醤(きんま)・彫漆(ちょうしつ)箱やブローチ、漆額作品など約50点が並び来館者の注目を集めている。21日まで。
省三は重要無形文化財保持者(人間国宝)の故音丸耕堂に師事。絵画的な作風で日本伝統工芸展などで受賞を重ねたほか、制作の傍ら県漆芸研究所で後進の指導にも当たっている。みち代は2009年から省三の下でで研さんを積み、県展知事賞や日本伝統工芸展の日本工芸会新人賞などを受賞して活躍の幅を広げている。
3回目となる今回の親子展では、全国の公募展に出品した作品を中心に紹介。このうち、省三の「蒟醤箱『万華』」は黒漆を背景に花と唐草を金で緻密に描いた作品。自身が考案した点描技法を用いて、万華鏡のような鮮やかな世界観を醸し出している。
また、みち代の「乾漆蒟醤盆『楽園』」は、水や光が満ちた世界で自由に飛ぶチョウを繊細に表現。「父の存在をはじめ、恵まれた環境で漆芸に打ち込めることへの感謝の気持ちを込めた」という。
このほか、湖畔を飛び立とうとするサギをあしらった彫漆箱や、月夜に流れる雲を表した漆額作品などを展示。省三は「それぞれが磨き上げた作風を間近で堪能してほしい」と来場を呼びかけている。
(四国新聞・2024/04/17掲載)