香川県さぬき市津田町の海岸沿いから細い路地を抜けて30秒ほど。古民家を改修した「うみの図書館」は、宿泊できる図書館として県内外から人が集う。「本と人が自然と流れ着き出合うような場に」との思いが込められ、オープンから1年を迎えた同館に足を運んだ。


海をテーマにした本が並ぶ館内=香川県さぬき市津田町、うみの図書館

海をテーマにした本が並ぶ館内=香川県さぬき市津田町、うみの図書館


 同館は、同市で宿泊施設などを運営する「ゲンナイ」(黒川慎一朗代表=さぬき市出身)がクラウドファンディングを活用して昨年5月に開館。地元が誇る景観をPRするとともに、同町に図書館がなかったことから「本を通じて人が流入し、交流できる拠点を作りたかった」のが黒川代表の狙いという。
 建物に入ると、床には白い砂利が敷き詰められ、さまざまなトーンの青色で統一された内装が心を癒やしてくれる。漁業従事者が住居兼事務所として使っていた築約60年の古民家をリノベーションし、白砂青松で知られる同町の砂浜や穏やかな瀬戸内海をイメージしたという心地良い空間。また、深海をイメージした部屋もあり、存分に本の世界に浸れるのも魅力だ。
 約3400冊を所蔵する図書館エリアには大きく2種類の書籍を分類している。一つは海辺を舞台にした小説や海洋生物の図鑑など「海にまつわる本」。もう一つが地域内外から寄贈された本を指す「漂流文庫」がある。
 一度に5冊借りられ、貸出期間が最長2年間というのも特徴。館長を務める鏑木航河さん(24)=群馬県出身=は「図書館は借りて返すという関係性がある。貸出期間を2年にすることで遠方の人たちがまた訪れやすいようにした」と話す。
 書籍には「漂流日」「漂流先」などを記す貸出カードを貼り付け、本がどこを旅したのか知れる仕組み。琴平町や東京、富山などにある分館6カ所でも借りたり、返すこともできるという。


客室のドアには図書館の分類番号を組み合わせた番号を記載。部屋からは中庭が見える

客室のドアには図書館の分類番号を組み合わせた番号を記載。部屋からは中庭が見える


 施設は図書館エリアのほか、宿泊できる客室3部屋とカフェスペースを備える。中庭を眺めながら廊下を歩いていくと、客室フロアにつながる。三つある客室のドアには、それぞれ図書館の分類番号を組み合わせた部屋番号を記載。例えば136号室には、哲学(1)、社会科学(3)、産業(6)に関する書籍が用意されている。宿泊者は部屋に本を持ち込むことができ、午後7時の閉館後にも図書館エリアで読書を楽しめるのもうれしい。
 近年、町内の海沿いの通りには、県内の若手や移住者らが中心となって個性的なお店を続々とオープン。波音を聞きながら浜辺で読書を楽しむのもよし、宿泊してランチやカフェ巡りをするのもよし。「うみの図書館」を通じて、さまざまな本や人との出合いが創出されている。

(四国新聞・2024/05/11掲載)


うみの図書館



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