事故で両腕を失い、口に筆をくわえて日本画を描き続けた故南正文(まさのり)さんの作品展が、香川県高松市浜ノ町の新高松駅ビル「TAKAMATSU ORNE(タカマツ オルネ)」2階の特設会場で開かれている。生命力あふれる花々や鳥などが繊細に描かれた約40点が並び、来場者の目を引きつけている。19日まで。


南正文さんの大作「活きる」(右)と妻の弥生さん=香川県高松市浜ノ町、高松オルネ

南正文さんの大作「活きる」(右)と妻の弥生さん=香川県高松市浜ノ町、高松オルネ


 大阪府出身の南さんは、小学3年生のとき、父が営む木工所で機械に巻き込まれて両腕を切断。中学生のころ、同様に両腕をなくして口で絵を描く尼僧に弟子入りし、2012年に61歳で亡くなるまでに約900点の作品を制作した。
 作品展は晩年、日本中で展示会をすることを励みに闘病していた南さんの思いを受け、13回忌に合わせて妻の弥生さんが代表を務める「一般社団法人南正文よろこびの種を」が主催。生前から親交があった弘憲寺(高松市)の住職の協力を得て、高松開催が決まった。
 会場には、画面いっぱいの一本桜を花びら一枚一枚丁寧に描いた大作「活きる」のほか、亡くなる3日前まで筆を加え続けた未完の「繁栄の桜」、弥生さんと自身の寄り添う姿を2羽の鶏に投影した「共に」などを展示。開催中は弥生さんが在廊しており、来場者は作品の説明を受けながら、色彩豊かな作品をじっくりと鑑賞している。
 また、南さんが口にくわえやすいように加工し、実際に使用していた筆を初めて展示。絵の制作風景や日常が切り取られた10分程度の映像も上映している。弥生さんは「一人でも多くの人に彼の絵や人柄に触れてほしい」と話している。作品展は午前10時~午後8時(19日のみ同6時まで)。入場無料。

(四国新聞・2024/05/12掲載)



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