香川県高松市円座地区に伝わる県指定有形・無形民俗文化財の人形浄瑠璃「香翠座(こうすいざ)デコ芝居」を継承する同芝居保存会は、6月から同市栗林町の栗林公園で定期公演を行う。地元以外での定期公演は初めて。香翠座と縁深い高松松平家が別邸として使っていた同園で、190年の歴史を紡いできた伝統芸能の魅力を多くの人にアピールしようと、座員たちは熱のこもった稽古に励んでいる。


栗林公園での定期公演に向けて稽古に励む「香翠座デコ芝居保存会」の座員=高松市円座町、東永井集会場


 香翠座デコ芝居は、江戸末期の1833(天保4)年10月、「香翠座」というデコ人形芝居の一座が結成されたことに始まると伝えられる。高松藩の連枝、松平頼該(よりかね)が援助奨励し、「円座のデコ芝居」と呼ばれて親しまれてきたという。
 同園での定期公演は、にぎわいづくりの一環。高松松平家とゆかりのある郷土の伝統文化を、来園が増えている訪日客や多くの県民に知ってもらおうと、同園が企画した。打診を受けた保存会が今年2月に上演したところ、立ち見が出るほど好評だったことから定期化が決まった。
 定期公演の第1弾は6月2日。生き別れた親子の情愛を描いた「傾城(けいせい)阿波(あわの)鳴門(なると)―巡礼歌(じゅんれいうた)の段―」を午前11時から、夫婦愛を題材にした「壺坂観音霊験記(つぼさかかんのんれいげんき)―山の段―」を午後2時から上演する。保存会の座員12人は同市円座町の東永井集会場で稽古を積んでおり、三味線や語りに合わせて1体の人形を3人で操るなど、本番で情感あふれるやりとりを披露できるよう表情や動きを入念に確認している。
 同園での定期公演について、保存会の山崎謙治会長(73)は「うれしい限り。何とか成功させて、ずっと続けられるよう頑張りたい」と意気込む。7月に宇佐八幡宮(同市香西本町)で開かれる「笠居郷夏越しの祭り」でも公演が決まっており、「併せて、一緒にやりたいと思う人を増やしたい」と、座員の確保にも努めている。
 同園の公演会場は商工奨励館北館。香翠座の歴史やあらすじも紹介する。観覧無料(入園料必要)。6月1、2日に開かれる「花しょうぶまつり」のイベントの一つとして上演する。本年度の公演は来年2月にも予定している。

(四国新聞・2024/05/15掲載)



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