東讃屈指の桜の名所として知られる「亀鶴公園」(さぬき市長尾名)。季節は移ろい、5月下旬からは青や紫、黄色など色とりどりのハナショウブが園内を彩っている。9日に恒例の「長尾ショウブまつり」が開かれるという本紙の記事を目にし、一足早く現地を訪れた。


黄色や紫色のハナショウブを眺める来園者=さぬき市長尾名、亀鶴公園

黄色や紫色のハナショウブを眺める来園者=さぬき市長尾名、亀鶴公園


 高松道の津田寒川インターチェンジから車で20分ほど。園内に入ると、西方には鶴の飛ぶ姿に似た「鶴が山」を臨み、その東方には宮池が広がる。池の中央には外周610メートルの亀島が浮かび、陸地と島を結ぶアーチ型の赤い「さくら橋」が緑豊かな風景のアクセントになっている。


ハナショウブと木々が広がる園内で、赤い「さくら橋」がアクセントになっている

ハナショウブと木々が広がる園内で、赤い「さくら橋」がアクセントになっている


 園内の南西部一帯を涼しげな色合いで染める「花しょうぶの里」(約3300平方メートル)には、約200種の約1万5千株が植栽されている。紅色に濃い紫筋が入った「玉堂」や、藤色の覆輪が特徴の「夢の羽衣」、藍色の細かい脈が美しい「小青空(こあおぞら)」など、個性豊かなハナショウブが観賞できる。
 さぬき市によると、ハナショウブの植栽は1992~93年に旧長尾町が国の補助を受けて「水環境整備事業」として実施。桜の時期に集中していた公園利用を、一年を通して楽しんでもらう狙いがあったという。
 この時季はアジサイとの競演も楽しめ、水色や紫の花々をカメラに収める家族連れらも見られた。夫婦で訪れていた同市津田の犬伏武士さん(84)は、「今年の花は全体的にこぢんまりとしているが、寒色系は見ていると心が安らぐ」と笑顔で教えてくれた。
 ただ、ハナショウブをはじめとしたアヤメ科の植物は、同じ場所で何年も作り続けると次第に生育が悪くなる連作障害が起きる。これを防ぐため、市ではハナショウブの里を4区画に分け、毎年土壌改良を行っている。一部区画は花付きが悪いものの、その他の区画では凜(りん)と咲き誇り、来場者の目を楽しませている。
 ショウブまつりは新型コロナウイルス禍の期間をのぞき、毎年数万人が訪れる恒例の行事。86年に地元有志でつくる「花しょうぶを愛でる会」の会員が鉢植えのハナショウブを前山ダム公園に持ち寄ったのが始まりだそうだ。第9回から亀鶴公園で開かれるようになり、地元団体によるバザーや竹細工コーナー、お茶席などが設けられている。
 8日午後7時から同9時半まではハナショウブのライトアップも実施される。この時季ならではの風情を堪能してみてはどうだろうか。

(四国新聞・2024/06/08掲載)



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