子どもや女性の守り神とされる訶利帝母尊(かりていもそん)を祭る四国霊場76番札所・金倉寺(香川県善通寺市金蔵寺町)。ここで肌着などの背中に魔よけのための刺しゅう「背守り」を施すワークショップが開かれている。子どもの健やかな成長を刺しゅうに託すという、古くから伝わるこの慣習に興味を持ち、車を走らせた。


赤ちゃんの肌着に丁寧に糸を縫い付ける参加者=香川県善通寺市金蔵寺町、金倉寺

赤ちゃんの肌着に丁寧に糸を縫い付ける参加者=香川県善通寺市金蔵寺町、金倉寺


 同寺によると、昔は背中に霊魂が宿るとされ、着物の背中部分の縫い目が「目」の代わりになったと考えられていた。子どもの着物は縫い目がなかったため、背中から魔が忍び込まないよう「背守り」が生まれたといわれている。
 縦に9針、男児は左に3針、女児は右に3針縫い、糸の端は長く垂らしておくのが基本。池などに落ちた時に守り神が引き上げやすくするためだそうだ。また、悪鬼に捕まりそうになった時には、糸が身代わりとなってするりと抜けるようになっている。
 しかし、近年では時代の経過とともに、意味合いにとらわれないデザイン性のあるモチーフが増えていったという。以前は縁起が良い吉祥模様や長寿の象徴である亀などの刺しゅうが主流だったが、今ではそのデザインも多様化してきた。


トンボや小鳥などかわいらしい柄の背守り

トンボや小鳥などかわいらしい柄の背守り


 ワークショップは5年ほど前から毎月開催、夫婦や友人同士、祖母ら幅広い人が訪れるそうだ。取材日には出産を控える2人の女性が参加していた。
 まずは小鳥やウサギなどさまざまな柄の写真が載った本から好きなものを選ぶ。かわいらしいものばかりで肌着や服のワンポイントにもなりそう。続いて生地に専用のペンで柄を下書きし、その後は糸を通して下書きに沿って縫い進めていく。
 参加者は出産について話したり、子育ての楽しさを聞いたりと和やかな雰囲気の中、30分程度で完成させた。肌着にゾウの刺しゅうを施した女性は「男の子が生まれる予定で、この子のために何かしたいと参加した。優しい心を持った大きな子に育ってほしいと願いながら縫った」と話していた。
 一針一針に思いが込められた「背守り」。いつの時代も親が子を思う気持ちは変わらない。
 日程はホームページを参照。料金は千円(同寺で安産祈願を受けた人は無料)。問い合わせは金倉寺、電話0877-62-0845。

(四国新聞・2024/06/22掲載)


天台寺門宗別格本山 鶏足山 金倉寺



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