風景と対話重ね作風築く 魁夷が描いた心の風景 東山魁夷美術館 9月1日まで
香川県坂出市沙弥島の東山魁夷せとうち美術館で、第2期テーマ作品展「自然は心の鏡 魁夷が描いた心の風景」が開かれている。自然美に心象が溶け込んだ独自の作風を追求し、“風景との対話”を重ねてきた魁夷の姿が垣間見える。9月1日まで。
今展では、日本画や版画のほか、制作の過程を知ってもらおうとスケッチや下図計25点を魁夷のコメントと共に紹介している。
1階では、滝や海、岩を写したスケッチ、1947年から99年までに手がけた日本画などを展示。戦後間もなくから時の経過とともに心情や作品の雰囲気が変遷していったことが分かる。晩年に制作した「月光」は雪景色の中に1本の裸木がそびえ、空には瞬く星が描かれており、魁夷作品の特徴ともいえる清澄さが際立っている。
2階では、依頼から10年の歳月をかけて取り組んだ唐招提寺(奈良市)御影堂の障壁画制作について知ることができる。同寺を創建した鑑真和上は、中国から日本にたどり着いた際には視力を失い、美しい景色を目に焼き付けることができなかった。魁夷はその不屈の精神に感銘を受け、故郷・中国と日本の風景をささげようと筆を握った。「山雲」は日本各地を取材旅行して描いた逸品。
また、日本画の原寸大の下図(縦174センチ、横117センチ)や、雑誌「新潮」の表紙絵、料亭の天井画として制作したとされる色彩豊かな日本画も展示しており、魁夷の歩みを伝えている。
入場料は一般310円ほか。20日午前11時から学芸員による作品解説がある。問い合わせは東山魁夷せとうち美術館、電話0877-44-1333。
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東山魁夷せとうち美術館は、9月2日から来年4月上旬まで設備工事のため休館する。
(四国新聞・2024/07/19掲載)