香川県仲多度郡琴平町で江戸時代から1975年まで営業していた旅館・虎屋別館が、8月から半世紀ぶりに営業を本格再開する。往時の外観や内装を可能な限り残して修繕。訪日客を含めた旅行者にノスタルジックな雰囲気をアピールし、琴平の活性化に一役買う。


虎屋別館の「菊の間」について説明する山内社長=琴平町

虎屋別館の「菊の間」について説明する山内社長=琴平町


 虎屋旅館は江戸時代から約400年間、金刀比羅宮の表参道沿いで営業。別館は江戸末期に賓客向けの施設として開設されたが、本館と共に75年に休業した。
 修繕したのは、別館のうち、昭和天皇らが宿泊した築約120年の建物。虎屋旅館跡地の再開発に携わる「森と山」(同町)が、観光庁の補助事業「地域一体となった観光地・観光産業の再生・高付加価値化事業」を活用し、昨秋から工事を進めていた。
 建物は木造2階建てで、最も広い「菊の間」は、10畳、7畳、3畳の和室と専用の浴室・トイレを備え、金箔(きんぱく)のふすま、黒い土壁など、当時の豪華な建具や内装を復元している。地元出身の和田邦坊の作品や、円山応挙の弟子が描いたと伝わる掛け軸など、虎をモチーフにした美術品も展示。「武者隠し」と呼ばれる広さ2畳の一角には、御簾(みす)が掛けられ、天井に鳳凰(ほうおう)の彫刻が施されている。


半世紀ぶりに営業を本格再開する虎屋別館

半世紀ぶりに営業を本格再開する虎屋別館


 このほか客室3室や、ダイニングや浴室などの共用スペースも設けた。菊の間は最大10人まで、他の部屋は最大6人まで泊まれる。宿泊料金は、菊の間で1人1万3千円から(食事別)。
 「森と山」の山内健社長は「かなり傷んでおり、当時の様子を残すのに苦心した。現代の旅館とは違う、明治・大正・昭和の空気を感じてもらいたい」と話している。
 再開発では、9月にグランピング施設、2026年に世界的建築家・隈研吾氏設計の複合型宿泊施設が開業する予定。

(四国新聞・2024/07/29掲載)


虎屋別館(Instagram)



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