廃棄されたフィルムやパソコン、携帯電話の基盤中に含まれている銀。これらをリサイクルして生まれた「銀粘土」で制作したアクセサリーなどを紹介する企画展が、香川県高松市庵治町の歯ART美術館で開かれている。主催は同市で工房を構える坂田忍(50)。今回で5回目を迎え、「捨てられるはずだったものが思い出に変わるのが銀粘土の魅力。多くの人に知ってほしい」と力を込める。


銀粘土作品が並ぶ会場に立つ坂田さん=高松市庵治町、歯ART美術館


 銀粘土の歴史は浅く、貴金属のリサイクル事業に取り組む東京の企業が1995年に開発。純銀の微粉末や水などが原料で、手でこねて自由に形を作り、家庭にあるガスコンロなどで焼成すると純度の高い銀が完成する。その後しっかり磨き上げると、普段目にするシルバーと同様の輝きが生まれる。
 坂田は高松工芸高金属工芸科で彫金を学んだ。もともと銀粘土に興味があり、市内のカルチャースクールなどに通って研さんを積んだ。30歳でインストラクターの資格を取得。工房「忍銀(しのぎん)」で教室を開く傍ら、国内外でワークショップを行い作品作りの楽しさを伝えている。


坂田さんによる銀粘土で制作したティアラ


 しかし、銀粘土の知名度はまだ低く、坂田によると現在県内で教室を開いているのは忍銀を含む3軒のみ。この状況に奮起した坂田は2016年から2年に1度企画展を開催。当初は四国の作家8人で始めたが、作家間で話題を呼び、今回は関東や関西を中心に、ニュージーランドなど各地で活躍する61人の作品約250点が集まった。
 会場には、銀粘土と銅粘土、ガラスを組み合わせた指輪や、花がモチーフのティアラ、マクラメ編みを用いたブレスレットを展示。坂田は「銀粘土作家の作品が一堂に集まる機会は全国的に見てもほとんどない。リサイクルから生まれた銀粘土に触れて、限られた資源の有効利用についても考えるきっかけとなれば」と話している。
 企画展は29日まで。入場料は600円ほか。問い合わせは歯ART美術館、電話087-871-0666。

(四国新聞・2024/09/05掲載)


歯ART美術館



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