漆芸の美 色彩豊かに 香川県漆芸研究所修了展 来月19日まで
香川県漆芸研究所(香川県高松市番町)の歴代修了作品の展示会が、香川県文化会館(同所)で開かれている。「彩漆(いろうるし)の美」をテーマに白、朱、黄、緑の色別に計約30点を紹介。緻密(ちみつ)な彫りや色彩豊かな香川漆芸の力作が一堂に集まっている。来年1月19日まで。
同研究所によると、色漆は当初、朱、黒、黄、緑、褐色の5色に限られていた。明治時代にチタニウムを用いた白漆が開発され、他の色と混ぜることで中間色を自由に出せるようになったという。
天雲わかなは白漆を基調とした「彫漆ぽっくり下駄 喜」を出品。桐(きり)で成形し、それに漆の配合を変えながら重ね、ピンクから柔らかなベージュへのグラデーションを生み出している。
森安史の「乾漆蒟醤食籠(きんまじきろう) もみじ」は、朱色の濃淡が目を引く作品。小玉真裕は、山吹色やレモン色などの漆で、たそがれ時にトンボが飛んでいく様子を蒟醤の軸箱にして表現。岩沢佳代子の「彫漆箱 月来香」は白と緑の組み合わせに気品があふれ、磨き上げられた漆がガラスのような透明感を放っている。
このほか、色漆の薄板を張り合わせて研ぎ出す独自の加飾技法「彩切漆(いろきりうるし)」を生み出した中村芳弘による工程見本なども注目を集めている。また、重要無形文化財保持者(人間国宝)の音丸耕堂と磯井正美による色漆を用いた作品も並び、漆芸の表現の多様さを伝えている。
入場無料。問い合わせは同研究所、電話087-831-1814。
(四国新聞・2024/12/12掲載)