香川県小豆郡小豆島町出身の作家・壺井栄(1899~1967年)が知人宛に書いた手紙や代表作「二十四の瞳」の映画シナリオ本などを展示する企画展が、同町田浦の二十四の瞳映画村内にある壺井栄文学館(大石雅章館長)で開かれている。丁寧な筆致で、知人の心情や体調などを気遣った手紙からは、栄の優しさが伝わってくる。13日まで。


壺井栄が知人宛に送った手紙の内容に見入る来館者=香川県小豆郡小豆島町田浦、二十四の瞳映画村内の壺井栄文学館

壺井栄が知人宛に送った手紙の内容に見入る来館者=香川県小豆郡小豆島町田浦、二十四の瞳映画村内の壺井栄文学館


 企画展は、栄と親交があった同町出身の故山口大二さん=東京都=が収集していた直筆原稿など533点を遺族が2021年秋に町に寄贈し、整理作業が完了したことで開催。今回は「山口大二コレクション・後期展」と銘打ち、直筆の手紙や「二十四の瞳」のシナリオ本、関係資料など合わせて14点を展示している。
 注目を集めているのは、栄が巻物状の和紙に、筆で書いた手紙。戦時中だった1942年から44年にかけて山口さんの妻・千枝子さんに送ったもので、家族が招集されたことへの思いや、裁縫が得意な千枝子さんへのお願いごとなどを柔らかな筆遣いで、しゃべり口調で記しており、栄の穏やかな人柄がにじみ出ている。
 このほか、「二十四の瞳」の初版本3冊や、木下恵介監督が脚色したシナリオ本、映画化にあたっての報道記事を山口さんが切り抜いてまとめたスクラップブックなどが並んでいる。
 家族で訪れた福井市の主婦、畑野恵子さん(75)は「『二十四の瞳』に込められた平和への思いそのもののような、栄さんの優しさが手紙にあふれている」と話していた。
 映画村の入村料として中学生以上850円、小学生430円が必要。問い合わせは同館0879-82-5624。

(四国新聞・2025/01/03掲載)


二十四の瞳映画村



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