香川県さぬき市大川町の富田神社(六車博宮司)の随身像が、明治初期以来約150年ぶりに修復され、昨年末から拝殿で一般公開を行っている。随身門に安置されていた左右2体の随身像で、文化財の指定はされていないが、江戸時代後期に制作されたとみられる地域の貴重な財産だ。同神社は「風雨にさらされひどい状態だったが、なんとかよみがえりほっとした」と胸をなで下ろしている。


約150年ぶりの修復作業を終えた2体の随身像の修復前と修復後の姿


 推定樹齢600年超のクスノキで有名な同神社は、応神(おうじん)天皇、仲哀(ちゅうあい)天皇、神功(じんぐう)皇后を祭神とする。旧大川町が発行した「大川町史」によると、平安時代中期までには創建され、地域の氏神さまとして親しまれてきた。随身像と随身門は傷みが激しく、30年ほど前から懸念事項だったという。
 随身像の修復は、同神社禰宜(ねぎ)の六車瑞恵さん(69)が、奈良大の通信課程で歴史学や考古学を学んでいたのがきっかけ。その際、講師を務めた一般社団法人天野山文化遺産研究所(大阪府河内長野市)の山内章代表理事に事情を伝えたところ、修復に協力してもらえることになった。
 修復は昨年7月からスタート。山内代表理事らによると、随身像はほこりをかぶり、ところどころ欠損していた。調査の結果、随身像の彩色は使用絵の具の特徴から明治10年代に修理が行われたとみられ、今回の修復は色が残っている部分の剥落止め処置を行い、既に剥落している箇所を補彩するなどして昨年12月初旬に完了した。
 随身像を安置していた随身門は、棟札から江戸時代後期の1813(文化10)年に再興、48(弘化5)年に修復されていたことも判明。同神社は随身門についても、文化・伝統を継承すべく建て直しではなく、素材をなるべく活用する方向で修復工事を行っている。


随身門の格子の中に随身像を安置していたことを説明する六車さん=香川県さぬき市大川町、富田神社


 六車さんは、およそ150年ぶりの修復が完了したことに「今後また100年、200年とこの地域を見守っていただきたい」と感慨深そうに話した。
 同神社は随身像と随身門の修復にかかった費用の不足分を芳志で補うことができればと願っており協力者を募っている。

(四国新聞・2025/01/04掲載)



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