香川県高松市出身の洋画家猪熊弦一郎(1902~93年)の油彩画「toys」(縦約90センチ、横約130センチ)が坂出市へ寄贈されたことを受け、11日から同市寿町の市民美術館で一般公開される。同作品が一般向けに公開されるのは35年ぶり。展覧会では同市在住の画家山口一郎さん(55)が猪熊作品に触発されて制作した動物画のインスタレーション作品も展示され、2人のアーティストのコラボレーションが楽しめる。


猪熊弦一郎の油彩画「toys」(坂出市民美術館提供)

猪熊弦一郎の油彩画「toys」(坂出市民美術館提供)


 「toys」は顔や鳥、ロボットなど、晩年の猪熊が好んだモチーフを幾何学模様的に並べた作品。90年に制作され、東京など3カ所の個展で展示された。作品は坂出市に住む猪熊の親戚が91年の丸亀市猪熊弦一郎現代美術館開館の際、所有していた猪熊の初期作品数点を同館へ寄贈した返礼として猪熊からプレゼントされて以降個人所蔵となり、一般公開されてこなかった。
 坂出市が親戚遺族から昨年4月に「toys」を寄贈されたことで今回、展覧会「猪熊弦一郎×山口一郎 アートの出会い」を企画。山口さんは学生時代からの猪熊ファンでもあり、同館が同9月に「toys」とともに展示する作品の制作を依頼した。


長くつないだ模造紙に動物を描き、壁面を彩るインスタレーション作品を制作する山口さん=坂出市寿町、市民美術館

長くつないだ模造紙に動物を描き、壁面を彩るインスタレーション作品を制作する山口さん=坂出市寿町、市民美術館


 山口さんの作品「ZOO」は、フラミンゴや象、ゴリラなど約40種類の動物たちが行進する様子を黒いアクリルインクで描いた。全判サイズの模造紙を縦に2枚張り合わせて約130枚をつなぎ、展示室の壁面約60メートルを覆う。山口さんは「『toys』に描かれた動物たちが画面から抜け出したイメージ」とコンセプトを語る。制作は5、6日の2日間で終えており、展示の準備が進んでいる。
 「猪熊さんは色、構図など、誰にもまねできない作品を生み出した日本を代表する画家。一緒に展示する作品の制作依頼は、うれしかった」と山口さん。「大人だけでなく子どもたちにも来館してもらい、作品を面白がってもらいたい」と期待している。
 作品展は19日まで(14日休館)。入場無料。問い合わせは坂出市民美術館〈0877-45-7110〉。

(四国新聞・2025/01/10掲載)


新春ロビー展 猪熊弦一郎×山口一郎 アートの出会い



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