蒔絵と漆芸 融合の軌跡 辻家の系譜たどる企画展 高松・来月2日まで
きらびやかな蒔絵(まきえ)と彩り豊かな香川漆芸―。この二つが融合した作品を取り上げる企画展「辻家の系譜」(県漆芸研究所主催)が、香川県高松市番町の香川県文化会館で開かれている。石川県の能登にルーツを持つ香川の蒔絵師・辻家の歩みをたどるもので、初代から4代までの38作品によって伝承の軌跡をうかがうことができる。3月2日まで。
同研究所によると、辻家の歴史は明治末期にさかのぼる。初代北陽斎は京都で蒔絵を習得した後、縁あって能登の珠洲から高松に移住。2代目北陽斎は、香川漆芸中興の祖・磯井如真が結成した「工会(たくみかい)」で活躍し、3代目の照二は箱の内側に模様を施す「逆さ蒔絵」の技法を確立した。4代目の孝史は県漆芸研究所で後進を指導する傍ら創作に励んでいる。
企画展は3代目照二の作品4点が同研究所に寄贈されたことを受け開催。
照二の「乾漆彩色(かんしつさいしき)蒔絵箱 群遊」は、チョウが舞うクローバー畑の穏やかな風景を表現。香川漆芸の彩色を生かし、パステル調の淡いグラデーションを施している。「逆さ蒔絵」によって箱の内側にも同様のデザインがあしらわれ、4代目の孝史は「父は人間の内面にある美しさを作品に投影しようと考えたのだろう」と説明する。
一方、孝史は蒔絵と香川漆芸の技法「存清(ぞんせい)」を組み合わせた作品を紹介。オリーブなど瀬戸内のモチーフをあしらった「籃胎存清食籠(らんたいじきろう) 讃歌(さんか)」のほか、ボールペンや手鏡といった現代の生活にマッチするものもある。
父親の照二を早くに亡くし、蒟醤(きんま)の重要無形文化財保持者(人間国宝)故太田儔に師事した孝史。蒔絵は実家にあった道具や本を見て独学で学んだという。「失敗も多いが、父の逆さ蒔絵と太田先生の籃胎技法を融合させた作品を追究したい」と語り、今回の企画展について「代々伝わる技術を見て、伝統継承の大切さを感じてほしい」と話している。
入場無料。問い合わせは県漆芸研究所、電話087-831-1814。
(四国新聞・2025/02/06掲載)