時の納屋 香川県さぬき市小田 窓から望む大パノラマ 地元食材使った料理も魅力
香川県さぬき市北部に位置する大串半島。その活性化拠点として昨年6月にオープンした飲食施設「時の納屋」(同市小田)。目の前に広がる瀬戸内海の大パノラマと、地元の食材をふんだんに使用した料理の両方が堪能できるとあって、評判を呼んでいる。
施設を運営するのは同市の第3セクター「市SA公社」。大串半島を瀬戸内海国立公園としてふさわしい自然豊かな姿に時間をかけて戻すことをコンセプトとし、「主役は建物ではなく環境と景観」と位置づけている。
四国霊場31番札所・竹林寺(高知市)の納骨堂を手がけ、2016年の日本建築学会賞(作品)を受賞した堀部安嗣さんが設計を担当。ランドスケープデザイナー・造園家の田瀬理夫さんが空間デザインを担った。
駐車場に車を止めると、「時の小径」というスロープが見えた。建物へとなだらかに続く石畳の道。高低差をつけるなどして車道が見えないよう仕掛けが施されている。道の両脇の芝生には小さな苗木が植えられている。コンセプト通り、半島に自生していたマツなどの植物を育てる取り組みの一環で植栽されたものだそう。
「時の納屋」の扉を開けると、同施設の満濃孝所長が迎えてくれた。早速、目に入ったのが窓から望む絶景。瀬戸内海がびょうぶ絵のように広がっていた。海上にはゆっくりと行き交う船が浮かび、時間を忘れてずっと眺めていられる。天候に恵まれれば淡路島が見えるという。
外壁などにはスギを使用、経年による風合いの変化も楽しめるという。店内の家具は地元職人の手作り。紙を素材にした家具用ひも「ペーパーコード」を座面に用いた椅子は、体を優しく受け止めてくれる。
地元の食材を使った料理も魅力だ。満濃所長が「ここだからこそ味わえるものを」とメニューを考案した。特に注目を集めているのが1日10食限定の「樽(たる)のおにぎりランチ」。さぬき産の豚肉や卵などを使用、県指定の伝統工芸品「讃岐桶樽(おけだる)」に入って運ばれてくるランチには香川の魅力が満載。お菓子作りが趣味の満濃所長手作りのケーキなどスイーツメニューも好評だ。
「心の中の過去・現在・未来をしまっておける場所に」との願いを込めて名付けられた同施設。満濃所長は「いろんな話に花を咲かせ、皆さんの思い出づくりにしもらえれば」としている。
次に訪れた時はどんな景色が広がっているのだろう。穏やかな海を眺めながら思いを膨らませた。
(四国新聞・2025/02/08掲載)