香川県土庄町のシンボル的な存在でハイキングなどで人気の皇踏山(おうとざん)(標高394メートル)に、地元の住民有志が二つの登山道を整備し、登山口に案内板を設置した。登るのにかかる時間や展望の名所、目印になる遺跡などを分かりやすく紹介しており、「古くから親しまれてきた里山。山道からの風景や野鳥のさえずりなど豊かな自然を感じながら多くの人に気軽に登ってもらえれば」としている。


再整備した登山道の登り口に案内板を設置する地元住民ら=香川県小豆郡土庄町上庄


 土庄港の北東部にある皇踏山は、3世紀ごろに小豆島を訪れた応神天皇が登ったとの言い伝えが名前の由来。尾根筋には総延長約1・5キロの石塁が見つかっており、平安時代末から戦国時代にかけて、海に近い地形を利用した山城が築かれていたと推察されている。
 同山の主な登山道は、笠滝地区を通る遍路道と渕崎地区を起点とする2ルートの合わせて三つ。地元住民らは、瀬戸内国際芸術祭などで島を訪れる観光客らに小豆島の自然美を体感してもらおうと、以前は使われていたが利用が激減して荒れてしまった山道に着目し、2023年10月から再整備に取りかかった。
 一つは上庄地区を登り口とするルートで、昭和時代の中ごろまでは山の中腹にあった田畑への農道として使われていた。もう一つは渕崎地区の西部を起点として尾根筋を登るハイキングコース。余暇の過ごし方の変化で昭和後期から利用が途絶え、道だった場所には竹や木が生い茂っていた。
 住民らは山道の目印として太い樹木に結ばれていたピンク色のリボンの切れ端などを頼りに、山道を覆う竹や低木など伐採し、崩れた石を積み直して一部は階段状に固定。目線の高さに新たにピンク色や紫色のリボンを結び付けるなどした後、試験的な登山を繰り返して「足場が不安定」「視認性が悪い」などと指摘された場所の改善を続けて開通にこぎ着けた。
 案内看板は13日、上庄地区村里づくり推進委員会(丹生則幸会長)が二つの登山口に設置。縦90センチ、横180センチのアルミとプラスチック製の板に、イラストを交えて皇踏山の登山ルートが分かりやすく紹介されいるほか、山登りの総合情報サイトにつながるQRコードも掲載している。
 23年秋に山形県新庄市から移住し、登山道整備の中心的な役割を担ってきた同町渕崎の佐藤謙二郎さん(75)と達子さん(73)夫妻は「登るごとに景色が変化する素晴らしい山。多くの人に登ってもらい、たくさんの意見を聞きたい」と笑顔を見せた。

(四国新聞・2025/03/17掲載)



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