日本工芸会(東京)の公募展「第42回日本伝統漆芸展」が香川県高松市紺屋町の市美術館で開かれている。最高賞の文部科学大臣賞を受賞した北岡省三(高松市)の彫漆(ちょうしつ)作品など入賞7点を含む入選作全82点を展示。重鎮から新鋭までの多様な挑戦と個性豊かな作品群が見る側を圧倒している。30日まで。


北岡の「彫漆流動文鉢」


 同展は伝統の承継を目的に同会が毎年開催。東京と石川県・輪島を巡回し、高松は最終会場となる。県内からは入賞2人を含む16人の作品が並ぶ。
 北岡の「彫漆流動文鉢(りゅうどうもんはち)」は緩やかな曲線や濃緑から淡緑へのグラデーションが目を引く。高松を流れる川が瀬戸内海へ流れ込み、波が河口で渦巻いている様子を表現。スポンジと布を使ったたたき塗りを50回繰り返すことで鮮やかな色彩を生み出したという。乾漆を用いた動きのある造形にも熟練の技を感じさせている。
 また県漆芸研究所研究員の若槻万里奈による彫漆小箱「灯(ひ)ともし頃(ごろ)」は新人賞を受賞。夕暮れ時の藍色の空を濃紺色のハナショウブがぐるりと囲い、その2つが重なった一瞬を表現した。大胆な彫り下げや明るさが残る空へのグラデーションに若い感性が光っている。


個性豊かな作品に見入る来場者=香川県高松市紺屋町、市美術館


 北岡は「今までにない形に挑戦して思い切りやれた。気持ちはいつまでも若く、世の中に残るものを作っていきたい」と話した。
 入場料は一般200円ほか。問い合わせは高松市美術館、電話087-823-1711。

(四国新聞・2025/03/20掲載)



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