瀬戸内国際芸術祭2025=春満開、島々アート一色に
初夏のような陽気に包まれた18日、瀬戸内国際芸術祭2025春会期が開幕した。フェリー乗り場では、各島へ向かう航路に長蛇の列ができるなど、初日からにぎわいを見せた。半袖姿の外国人や興味深く現代アートに見入る観光客―。外国人に人気の直島では、デンマークから来日したという女性が「作品巡りを楽しみにしていた」と声を弾ませた。「島のすべてが優しい」。女木島で、そう印象を語ったのは兵庫県から来島した女性。地域の活性化に加え、インバウンド効果も期待される瀬戸芸。アート一色に染める祭典が瀬戸内を彩る。
島巡り起点、初日から列 高松港エリア
島巡りの起点となる高松港では、直島行きなどのフェリーに始発から長蛇の列ができた。大阪府から訪れた会社員沢田智秀さん(39)は「安藤忠雄さんらの建築を見るのが楽しみ。世界のアーティストの作品や、島ならではの自然も体感したい」と期待した。
漁網のアート作品「そらあみ」ごしに海を眺め、ベンチでゆったりと過ごす人や、瀬戸内の地魚を使った料理に舌鼓を打つ人の姿も見られた。
高松市屋島東町の屋島山上交流拠点施設「やしまーる」では動物をテーマにした作家9人の作品が並び、子どもから大人までがスマートフォンで写真を撮るなどして楽しんでいた。
記念写真は赤かぼちゃ 直島エリア
バス停に行列、レンタサイクルは全て貸し出し中になるなど初日から大勢の観光客らでにぎわった。
宮浦港近くにある草間弥生さんの「赤かぼちゃ」は人気作品の一つ。来島者はまず、ここで記念写真を撮り、次の目的地に向かっていた。ANDO MUSEUMを訪れた東京都の五十嵐紗月さん(28)は「打ちっ放しのコンクリートがすてき。カフェで飲んだコーヒーも体に染みた」と語った。
デンマークから来日したキャロライン・フォー・グスタフソンさん(31)は「地中美術館や点在するアート作品を巡るのが楽しみ」と笑顔を見せた。
初参加、瀬居島にぎわう 瀬戸大橋エリア
坂出市の会場は瀬居島、沙弥島、王越地区の3カ所を「瀬戸大橋エリア」として展開。初参加の瀬居島では、旧瀬居中学校(同市番の州町)を中心に総勢16人のアーティストが出品し、国内外の人たちが訪れた。
台湾から留学中の大学生で劇場芸術を学ぶ孫萌穂さん(25)=三重県在住=は「瀬戸芸は故郷の授業で知り、来たいと思っていた」と旧瀬居中の作品を鑑賞。地魚の唐揚げなどの「島メシ」を販売した漁師の須鼻裕典さん(40)は「1時間余りで売り切れ。次はもっと用意し、地域の味をお届けしたい」と話していた。
海辺の新作に驚きの声 小豆島エリア
草壁港(小豆島町草壁本町)周辺や同町神浦の海辺には、各地の雰囲気に合った新作が登場。観光客は、草壁港近くでは精緻な彫刻を施した木造船に驚きの声を上げ、神浦では、古くなった農具や漁具などを使った巨大な女神像を穏やかな表情で見つめていた。
マレーシアから訪れた曽憲佩(チャンヒンプイ)さん(72)は「同じ島でも場所ごとに海の表情が違うので作品の印象も大きく変わる。毎日、新鮮な気持ちで楽しめそう」とにっこり。同町草壁本町の飲食店員、浜野香澄さん(27)は「作品に加え、島の『食』も楽しんで」と語った。
島の雰囲気と作品堪能 女木島エリア
休校中の女木小学校では、今回初参加となるスウェーデンやニュージーランドの作家らの作品が並ぶ。ボランティアガイドの説明に耳を傾けながら、熱心に鑑賞していた埼玉県の会社員土田真帆さん(33)は「作品の迫力に圧倒された」と感想を語り、「ゆったりとした島の雰囲気も最高」と満足そうな表情を浮かべた。
受け入れ側は歓迎ムード。仮想世界をテーマにした原田郁さんの作品スペースでカフェを営業している組橋一高店長(51)は「さまざまな人と交流できるのは芸術祭ならでは。とても楽しみ」と期待を寄せた。
(四国新聞・2025/04/19掲載)