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柔軟な漆の発想に触れて 磯井正美展 31日まで、県文化会館
9月に3回忌を迎える香川漆芸蒟醤(きんま)の重要無形文化財保持者(人間国宝)磯井正美の作品展が、香川県高松市番町の県文化会館で開かれている。「非まじめ」を信念に作品作りに向き合った磯井の柔軟な発想に触れることができる。31日まで。
同展は香川漆芸を身近に感じてもらおうと県漆芸研究所(稲井真司所長)が企画。今回は額や箱など29点と蒟醤手板4点を展示している。
「蒟醤グローリー漆額(しつがく)」は磯井が飛行機に乗った際に出合った「グローリー現象」を作品にした。少しゆがんで丸みを帯びた四角は作者が見ている窓を表しており、円の中には小さな飛行機の影があしらわれている。
鮮やかな朱色が目を引く「蒟醤ハロン湾朝焼(わんあさや)け漆額」はベトナム北部にある大小の奇岩が作り出す景観を題材にした。磯井が創案した「往復彫り」の強弱によって、岩や水面に映る影の濃淡を繊細に表現している。
このほか、白地に虹の色をイメージした矢羽根が並べられた箱や、「歳寒三友」の画題に切磋琢磨(せっさたくま)してきた仲間への思いを込めたとみられる作品が並んでいる。香川県漆芸研究所の藪内江美専門職員は「漆の表現の幅広さや、工芸品も現代アートの一部ということを知ってほしい」と来場を呼びかけている。
入場無料。問い合わせは香川県漆芸研究所、電話087-831-1814。
(四国新聞・2025/08/21掲載)