洋画家・猪熊弦一郎が米ニューヨークに渡った1955年以降の作品を中心に紹介する「猪熊弦一郎展Since1955」が香川県丸亀市浜町の市猪熊弦一郎現代美術館で開かれている。画材の用い方が異なる抽象画など14点が並び、大胆かつ緻密な表現の変化を浮かび上がらせている。11月24日まで。


猪熊が渡米した1955年を起点に作品を紹介する展覧会=香川県丸亀市浜町、市猪熊弦一郎現代美術館

猪熊が渡米した1955年を起点に作品を紹介する展覧会=香川県丸亀市浜町、市猪熊弦一郎現代美術館


 猪熊は55年の渡米を機に、これまでの半具象的な表現を脱し、抽象的な絵画を開花、油絵の具を厚く重ねるなど、物質感のある作品を描くようになった。
 油彩画「Birth of Gray」の表面には凹凸やひっかいたような線があり、近くで鑑賞すると目で作品を「触っている」ような感覚に陥る。
 60年代には、都市の喧騒(けんそう)や秩序を描くことに関心を寄せ、当時、新しい画材だったアクリル絵の具を用いた大画面での表現を追求。アクリル画「Blue Streets」は画面上の無数の線から幾何学的な模様が生まれ、都市の持つエネルギーを感じさせる。
 余白と描き込んだ部分のバランスが共存する構図を確立したのは70年代。同年以降の作品として「Two Shores」シリーズなどが並び、ビビッドな色彩で壁面を彩っている。
 55年は、同館で開催中の企画展に出品している大竹伸朗(宇和島市)が誕生した年とも重なり、大竹が透明なマチエール(質感)を特徴とするシリーズを出品していることから、特にマチエールに着目して猪熊の作品を取り上げた。
 入場料は一般300円ほか。問い合わせは丸亀市猪熊弦一郎現代美術館、電話0877-24-7755。

(四国新聞・2025/09/18掲載)


MIMOCA丸亀市猪熊弦一郎現代美術館



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