幕末から大正にかけて活躍した高松ゆかりの儒学者、藤沢南岳(1842~1920年)の書を集めた特別展が20、21の両日、香川県高松市上林町の大西・アオイ記念館で開かれる。同市塩江町の茶室「花待草舎(はなまちそうしゃ)」主宰、美沢宗包さん(96)のコレクションなどから約80点を展示する。


藤沢南岳「和陶帰去来辞屏風」(部分)

藤沢南岳「和陶帰去来辞屏風」(部分)


 南岳は、関西大学のルーツとされる漢学塾「泊園(はくえん)書院」を開いた高松藩の儒学者、藤沢東畡(とうがい)の長男。幕末の「鳥羽伏見の戦い」で幕府側につき、朝敵とみなされた高松藩を、勤皇派へ転換させたことで危機から救った。小豆島の「寒霞渓」や大阪の「通天閣」を命名したことでも知られる。美沢さんは長年にわたり東畡・南岳親子や関係者の書などを収集しており、所蔵品は300点を超える。
 今回の目玉は、おととし新たに収蔵した南岳の六曲二双屏風(びょうぶ)「和陶帰去来辞(陶の帰去来辞に和す)」。南岳が岡山県の豪商・佐藤栄八のために書いたもので、中国の詩人陶淵明の詩「帰去来辞」にならって、岡山の風物が疲れた心を慰めてくれることを詠んでいる。このほか高松市の書家・安部杏邨(きょうそん)さん(2008年死去)が収集していた東畡や南岳の漢詩など5点も、安部さんの遺族の協賛を得て展示される。
 20日午後1時からは、英明高校の田山泰三教諭が「高松における泊園関係者顕彰の現状」、四国大(徳島市)の太田剛教授が「ここがすごい! 花待草舎コレクション名品紹介」として話すほか、泊園記念会長の吾妻重二関西大教授が特別講演を行う。観覧無料。21日は美沢さんによる茶席(有料)も設ける。問い合わせは大西・アオイ記念館、電話087-880-7888。

(四国新聞・2025/09/19掲載)



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