香川県漆芸研究所(香川県高松市番町)の創立70周年を記念した展覧会が、同所の県文化会館で開かれている。歴代の重要無形文化財保持者(人間国宝)の作品をはじめ、初の取り組みとして、県内外で活躍する修了生から募集した力作も展示。江戸時代の玉楮象谷から連綿と続く香川漆芸の歴史が凝縮した空間となっている。11月9日まで。


各分野で活躍する修了生の作品が並ぶ会場=香川県高松市番町、県文化会館

各分野で活躍する修了生の作品が並ぶ会場=香川県高松市番町、県文化会館


 同研究所は1955年に開所。これまで約480人が巣立ち、多くの修了生が漆芸家として活動している。70周年記念展は、1階で人間国宝展、2階で研究生の前期実習作品展、3階で修了生の「同窓生漆研展」を展開し、計約120点を展示している。
 同窓生漆研展は、各分野で活躍する同窓生の間にネットワークを構築してもらうとともに、現役研究生に進路選択の参考にしてもらうのが目的で、42人が1点ずつ出品した。
 このうち、神奈川県で甲冑の修復に携わる山田詩織は、首を守る防具の「喉輪」を存清(ぞんせい)の技法で現代的にデザイン。県内で漆芸家グループ代表を務める松本光太は、ギターに蒟醤(きんま)で植物の文様を施した。千葉県などで彫刻の修復に取り組む白沢陽治は、漆を100回塗り重ねる堆黒(ついこく)で人形を制作し、いずれも独創的な発想が光っている。


玉楮象谷の「一角印籠」

玉楮象谷の「一角印籠」


 1階の人間国宝の作品展は、磯井如真や音丸耕堂をはじめ、研究所の指導者を含めた18人の作品を紹介。中でも玉楮象谷の「一角印籠(いっかくいんろう)」は縦8・6センチ、横5・5センチ、厚さ2・9センチの印籠に昆虫や鳥などが999匹彫られており、象谷の彫りの精密さが見て取れる。会場では作中の生き物に関するクイズも用意している。
 同研究所は「伝統の技と自由な発想で発展してきた香川漆芸の歴史に触れてほしい」としている。
 入場無料。会期中は平日午後1時30分から漆芸実習の見学ができる。問い合わせは香川県漆芸研究所、電話087-831-1814。

(四国新聞・2025/10/30掲載)



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