20世紀初頭、万葉集や百人一首の和歌を題材に欧州で作曲された歌曲。その作品を現代の声楽家6人が歌い上げる「和歌inヨーロッパ」が9日、香川県高松市番町の県文化会館で開かれる。当時の欧州の人々が和歌をどのように捉えたのかを浮き彫りにする。


和歌を題材にした歌曲を練習する出演者=香川県高松市

和歌を題材にした歌曲を練習する出演者=香川県高松市


 声楽家の若井健司香川大特命教授らによる実行委が企画。英国の友人で研究者でもある声楽家ティローン・ランダウさんが大英図書館などで収集した資料や楽譜を使用した。
 若井特命教授によると、欧州人は江戸初期に和歌と出合ったという。カトリック宣教師たちがポルトガル語に翻訳し、その後、幕府の鎖国政策によって交流は一時途絶えたが、19世紀後半の開国によって再び日本文化が欧州に紹介され、芸術家たちが自らの作品に取り入れた。
 演奏するのは、ロシアのストラビンスキーや、ウィーンの巨匠マーラーの後継者フェリックス・ワインガルトナーらの18曲。
 題材となった和歌は、静御前が義経を慕って詠んだ「吉野山 峰の白雪 ふみわけて 入りにし人の 跡ぞ恋しき」(義経記)や、紀貫之が春の気配を表現した「桜花 さきにけらしも あしひきの 山の峡より みゆる白雲」(古今和歌集)などで、西行法師が瀬戸内海を詠んだ「山家集」の歌も取り上げる。
 演奏前には和歌の読み上げや解説があり、原文と比較しやすくした。若井特命教授は「欧州の作曲家たちが日本の自然と心情を繊細に詠んだ和歌をどのように受け止め、どう音楽に表現したのかを体感してほしい」と話している。
 午後2時開演。入場料は一般2500円(前売り2千円)ほか。問い合わせは若井特命教授、電話090-4507-5308。
 ほかの出演者は次の通り(敬称略)。
 水嶋育、杉ノ内柚樹、斎藤愛(以上ソプラノ)綾智成(テノール)大山まゆみ(ピアノ)鈴木桜子(和歌読み手)

(四国新聞・2025/11/07掲載)



関連情報