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さぬき映画祭 あす開幕 銀幕に飛び出す香川の人とまち
映画の祭典「さぬき映画祭2026」(同実行委員会、香川県など主催)が7、8の両日、香川県高松市玉藻町のレクザムホールなどで開かれる。20回目となる今回は、23年度の同映画祭シナリオコンクールの大賞受賞作を原作にした「ワタシ、発酵します!」を初公開するほか、過去の大賞作7本を一挙上映し、歩みを振り返る。映画の醍醐味(だいごみ)を肌で感じられる2日間になりそうだ。
2023年度シナリオコン大賞「ワタシ、発酵します!」 女性の成長 等身大に
オープニングを飾るのは初公開となる「ワタシ、発酵します!」。横浜市の松田恒代さん(45)の作品を映像化したもので、2023年度の「さぬき映画祭シナリオコンクール」大賞作品。脚本・監督も松田さんが手がけた。
主人公は「あざとかわいい」女性を無意識に演じてきた彩。婚約者にふられて東京から移り住み、母親の実家がある東かがわ市のしょうゆ蔵を手伝うことになる。
一方、いとこの愛可は結婚し、子育てをしながら蔵で職人見習いとして働き、着実に自分の道を歩んでいた。そんな正反対の性格の二人は対立するが、あることをきっかけに本音で向き合う。
それぞれの「今」を懸命に生きる姿が共感を呼ぶ。上映後は松田さんや、彩を演じた俳優の中村樹里さん、愛可役を務めた田中菜月さんらが登壇し、作品の印象や撮影時のエピソードなどを話す。
原作・脚本・監督 松田さんインタビュー 人も「発酵」し前進できる
原作・脚本・監督を手がけた松田恒代さんは4児の子育てをしながら初めて映画製作に挑戦した。作品への思いなどを聞いた。
―シナリオのコンセプトはどう生まれたのか。
仕事や育児で、さまざまな人たちと関わり、仕事と家庭の両立が難しい、地方の慣習が肌に合わない、など悩みを抱えていることを知った。そんな中、多様な菌が発酵し、熟成することでおいしいしょうゆができるように、人も多彩な価値観が混ざり合い「発酵」すれば前進できるのでは、と考えるようになった。
―しょうゆ蔵を舞台に設定した背景は。
夫の転勤で、一昨年までの3年間、高松市で暮らしていた。その間、東かがわのしょうゆ醸造元「かめびし」で製造現場を見学させてもらったり、小豆島で行われている「木桶職人復活プロジェクト」に参加したりした。それぞれの体験に感銘を受け、しょうゆ蔵を舞台にすることにした。
―主人公が成長していく姿を描いている。
男性中心の職人文化や外国人との交流で多様な人や価値観に触れながら自身と向き合う彼女の姿を通して、現代に生きる人々にエールを送りたい。
―会場に足を運んでくれる人らにメッセージがあれば。
支えてくれた皆さんには言葉で表せないほど感謝している。鑑賞した人々の心に少しでも残るものがあればうれしい。皆さんとともに、人として「発酵」していければ、と思っている。
「海辺へ行く道」 物語包む小豆島の風景
小豆島で全編ロケが行われた「海辺へ行く道」(横浜聡子監督)。ものづくりに夢中な中学生が一癖ある大人たちと関わる物語。陽気でユーモアあふれるストーリーを優しく包み込むかのような、穏やかな島の風景がスクリーンを彩る。
作品は漫画家三好銀さんの同名シリーズを原作に、横浜監督が脚本も手がけた。
キャストには注目の俳優原田琥之佑さん、麻生久美子さん、高良健吾さんらが名を連ね、昨年2月には世界三大映画祭の一つ「ベルリン国際映画祭」で特別表彰を受けるなど国内外で高い評価を得た。
舞台はアーティストが集まる海辺の町。14歳の美術部員・奏介と仲間たちは、ものづくりに没頭する夏休みを過ごしていた。そんな中、不思議な依頼が奏介らの下に飛び込んでくる。
「人生の幸福」を想像力豊かに描写した人生賛歌ともいえる作品。上映後は横浜監督が登壇する。
「本を綴る」 香川の書店 実名で登場
主人公はある理由で小説を書けなくなったベストセラー作家。現在はコラム執筆などをなりわいにする彼は、本に導かれて栃木県、京都府、そして香川県を訪れる。「本を綴る」は、旅先での出会いを通じて、再生を模索していくストーリーだ。
2018年に「花戦さ」で日本アカデミー賞優秀監督賞を受賞した篠原哲雄監督がメガホンを取り、脚本は、俳優などとしても活動する千勝一凜さんが担当した。主人公は、数多くのドラマや映画などに出演する矢柴俊博さん。
作品の随所に本への愛がちりばめられている。香川の場面では高松市丸亀町の宮脇書店本店やブックカフェ「半空」(同市瓦町)などが実名で登場。主人公とともに巡っているような感覚を覚える。出会った人々との温かな交流に心がほぐされ、鑑賞後には本を手に取りたくなっているだろう。
篠原監督から一言
以前、本広克行監督(丸亀市出身)から「ぜひさぬき映画祭に来て」と声をかけてもらったこともあり、今回参加できるのは感慨深い。香川は実は「本の居場所」が充実している土地。本作を見れば新たな発見があると思うのでぜひ劇場に足を運んで。
千勝さんから一言
多様な背景を持つ登場人物に、それぞれ共感できる点があると思う。思い込みや固定概念から脱却すれば、本の居場所があるように、人も新たなよりどころを見つけられる、というメッセージが伝われば。今後も「本」シリーズの製作を続けていきたい。
香川にゆかり 注目の2本
リライト
オール尾道ロケの作品「リライト」。監督の松居大悟さんは過去に映画祭でゲスト登壇したことがある。“時間もの”で高い評価を獲得している脚本の上田誠さんと初めてタッグを組んだ。
ある夏、主人公の女子高生は「未来から来た」と話す転校生と出会い、恋に落ちる。転校生からもらった薬で10年後にタイムリープした主人公は、未来の主人公から「あなたが書く小説」という本を見せられる。書き上げることを約束し、未来へ帰っていく転校生を見送ったが―。
TOKYOタクシー
国民的人気を得た「釣りバカ日誌」シリーズなどで監督を務めた朝原雄三さん(高松市出身)らが脚本を書いた「TOKYOタクシー」。木村拓哉さん、倍賞千恵子さんの好演で第49回日本アカデミー賞優秀作品賞に選ばれた話題作。
偶然出会ったタクシー運転手と高齢女性がさまざまな場所を巡る中で、女性の過去が語られる。山田洋次監督がメガホンを取った。
8日は高松市福岡町のイオンシネマ高松東を会場に、シナリオコンクール大賞受賞作の映画化作品7本を一挙上映する。家族愛や人としての成長、恋愛模様などを表現した多彩な作品がそろった。入場無料。
(四国新聞・2026/02/06掲載)

