香川県坂出市沙弥島の東山魁夷せとうち美術館で、日本画家・魁夷の木版画約20点と、実際に使用された版木や道具などの資料を紹介するテーマ作品展「魁夷の木版画―その技と道具」が開かれている。絵師、彫師、摺(すり)師による「技の結晶」ともいえる木版画の制作過程を展覧できる。4月5日まで。


魁夷の木版画とともに、版木などの資料を紹介するテーマ作品展=香川県坂出市沙弥島、東山魁夷せとうち美術館

魁夷の木版画とともに、版木などの資料を紹介するテーマ作品展=香川県坂出市沙弥島、東山魁夷せとうち美術館


 魁夷作品の木版画制作は緻密な作業が重ねられていた。彫師が原画を基に色数や版数を考え、約半年かけて版木を作成。その後、摺師が色の重ね方などを考えて試し刷りしたものに魁夷が修正を加えて刷り見本を仕上げて本刷りを行っていた。
 三重県の渓谷を捉えた「渓音」は30枚の版木が製作され、1枚に複数の版を彫るなどして貴重な板を有効活用していたという。会場には版木の一部が並び、繊細な彫りが間近で見られる。
 山あいに広がる生命力みなぎる若葉を描写した「谿(たに)若葉」は427回も色を刷り重ねている。色を重ねるたびに撮影された記録写真からは、魁夷の意図をくみ取った色彩表現を試みた熟練の技術力が読み取れる。試し刷りを見た魁夷が送った手紙もあり、細かな調整を依頼しつつ「全体としてはたいへん良く出来ております」とも記しており、彫師や摺師に信頼を寄せていたことがうかがえる。
 このほか、代表作の一つ「緑響く」や「夕静寂」などの木版画も展示している。
 入場料は一般400円ほか。21日午前11時から学芸員による作品解説がある。問い合わせは東山魁夷せとうち美術館、電話0877-44-1333。

(四国新聞・2026/03/12掲載)


東山魁夷せとうち美術館



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